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空気の日記

鈴木一平

  • 4月16日(木)

    二度寝して、両方とも夢を見る。一度目は職場で、上半期の実績を報告する夢。目が覚めて、それを夢だと認識する前に眠りに入ったせいか、次の夢でも仕事をしていた。そのうち、さっき伝えたのは夢の実績だったと気がついて、急いで正しい数字を上司に告げると、正しさの感覚だけが、二度目の夢から覚めたあとも残り続けた。
    午前中は実績資料の作成。異常値が出たので、勘で直す。上司に報告後、入浴。昼すぎに取引先と電話。直近の売上を共有したあと、ベランダに集まってくる鳥の話で盛り上がる。その流れで実家の話になり、電話口で伝えられる言葉から、先方の家のようすを組み立てる。
    このあいだ取り壊しがはじまって、バラバラになった木材の画像が両親から送られてきた。天井裏の梁が真っ黒になっている。雨もりを受けて腐ったのか、もともとそういう仕様だったのか。たずねると、屋根が茅葺きだった頃の煤だといわれる。慶応4年から記録がつけられた。150年近くのあいだ、柱まわりを残したまま屋根をすげ替えて、改築をくり返してきたという。茅葺きの屋根は10年ごとに取り替えられて、トタン屋根なら20年ごとに塗り直されるらしい。一度だけ、屋根が黒から赤へ塗り直されるのを見たことがある。地震のときは玄関があたらしく建て直された。家はさまざまな部分からできていて、それそれがちがう寿命を生きている。細胞のように代わる代わる中身が交換されていくなかで、骨組みだけはいちばん早くここにいて、最後まで同じ場所に立っていた。
    夜、プロパーの人に激詰めされる。むかしは外にお風呂があって、よく薪割りを手伝わされたと父から聞いた。庭の隅にコンクリートで埋められた空き地がある。作業スペースかなにかとおもっていたそこは、父にはいつか風呂場だった名残りとして眺められていた。薪はいまでも離れの奥に積んである。

    東京都・高田馬場
  • 5月9日(土)

    昼食を買いに外へ出ると、向かいのアパートの駐車場で、女の人が電話をしながらしずかに泣いていた。会話もなく、ときどき鼻をすすって、向こうの言葉を噛みしめるようにちいさくうなずいている。見ないふりをして通りすぎながら、あれは人が死んだときの泣き方だと、わけもなく納得していた自分におどろく。当時は祖母の一周忌と重なって、そういう目でものを見るようになっていたのかもしれない。ちょうど去年の今ぐらいの時期で、年号が変わる前のことだった。
    午前中は洗濯と爪切り。先日は排水溝が詰まり、水の問題に悩まされたものの、今回は滞りなく終わる。足の爪からにおいが消えていた。やり残した仕事を進めた結果、資料の体裁が崩れはじめたので、部屋の掃除に移行する。すこし前になくしていたスマートウォッチが見つかり、身体のデジタル化に取り組む。体温(36.3)と合わせて脈拍(72)や血圧(126-66)、呼吸数(19)を計測し、同期に報告。体温から今日の感染者数(東京都、36人)を引くと0.3になるね、といわれる。全部足すと289.3-229.3(253.3-193.3)になる。
    瓦礫が取り除かれて、まっしろな更地の上に基礎が組み上がり、いくつもの細い棒に支えられながら、あたらしい家のかたちが浮かび上がってくる。実家から、裏山に生えていたもみの木の画像が届いた。建て替えのついでに切り倒す話になったという。裏山の木のなかでもいちばん背が高く、おそらく家が建つ前からそこにいて、枝から枝へ、たくさんの鳥が鳴きながら飛び移っていた。もみの木は元気そうに見えて、内側が空洞になりやすく、すこしの衝撃でも倒れる可能性がある。暗闇のなかで広がっていく、空っぽの幹の内側について考えた。小さい頃に閉じ込められた蔵のなかを思い浮かべる。耳をすませると、居間のテレビから楽しそうな声がときどき聞こえた。
    クレーン車を使うのにちょうどいい場所がなかったので、根本から一気に切ることにした。まわりに酒と塩をまいて、業者の人がチェーンソーの電源を入れると、刃が踊るように回りはじめる。しばらくして、あたりの杉の枝がバラバラと音を立てて散らばり、空が明るくなった。草の上に開かれた木の断面には、幹のかたちを鏡のように写した年輪が、ぎっしりと詰め込まれていた。

    東京都・高田馬場
  • 6月1日(月)

    堀井一摩『国民国家と不気味なもの』(二〇二〇年、新曜社)によると、山県有朋は明治天皇への意見書「社会破壊主義論」(一九〇八年)のなかで、「社会主義」を《国家社会ノ存立ノ根本》に対する《病毒》と形容している。《今其ノ病根ニ向テ救治ノ策ヲ講スルノ急務ナルト同時ニ其ノ形体ヲ具スル者ニ対シテハ国家社会ノ自衛ノ為ニ最モ厳密ナルノ取締ヲ為シ此ノ病毒ノ瀰慢ヲ防キ之ヲ禁圧根絶セサルヘカラサルナリ》。
    山県は《病》という修辞を用いることで、「社会主義」が国体という巨大な政治的身体に外から入り込み、その全体性を蝕む排除すべき対象であることを仄めかしているが、同書はこの語が選ばれた背景として、貿易により国外からもたらされたコレラの蔓延を指摘している。そして、「伝染病」と「危険思想」の喩的な重ね合わせは、単なる修辞の問題にとどまらない。同書の指摘をさらに続ければ、医療行政は厚生省設置の一九三八年まで内務省の所轄であり、当時のコレラ対策は警察を主体として行われていたという。警察はコレラ患者に対して強制的な隔離措置や監視を行い、文字通り彼らを「犯罪者のように」扱っていたらしい。つまり、防疫対策と「危険思想」対策は、構造的にも認識的にもきわめて類似していたというわけだ。
    「社会破壊主義論」の提出から翌々年の一九一〇年、大逆事件が起きる。明治天皇暗殺計画の疑いによる「社会主義」者らの大検挙は、宮下太吉が爆発物取締罰則違反の疑いで連行された五月二十五日に始まる。三十一日には松室致検事総長が事件を刑法第七十三条(大逆罪)に該当すると認定し、六月一日には幸徳秋水と管野須賀子が逮捕される。最終的に逮捕・起訴された人数は二十六名にのぼり、うち二十四名が死刑判決を受けた(実際の執行は十二名)。なお、当時は社会主義・無政府主義が厳密なかたちで区別されておらず、「社会主義」という語は両者を含意する。
    ところで、スーザン・ソンタグは『隠喩としての病』(一九八二年、みすず書房)のなかで、特定の思想や人種に対して「共通の悪しき敵」のイメージを付与するために《病》の喩を用いるのは、とりわけ《全体主義》的な国家において見られる傾向であると述べている。代表的な例として、彼女はアドルフ・ヒトラーがユダヤ人に対して用いた《結核》の比喩などを挙げているが、果たして《病》という喩にふさわしかったのはどちらの方なのか。そう考えると、山県によって《病毒》と呼ばれた「社会主義」者よりも深刻な《病》に陥ったのは、その後の大日本帝国だったといえるだろう。病名は「超国家主義」と呼ばれる。そこでは国民全員が天皇を頂点とした国家のもとに結びつけられ、個々人の精神が「億兆一心」を体現すべく一点に集約されていく、という形式が取られる。その感染規模は「社会主義」をはるかに越えており、たとえば大逆事件の同時期に誕生した口語自由詩についても例外ではなかった。第二次世界大戦期において発表された口語自由詩は、戦意昂揚詩と呼ばれる病的な熱を帯びた形式を伴い、敗戦を契機として無症状化したものの、その後も一定の間隔を置いてたびたび類似の症状や、それに対するアレルギーのような反応が確認されている。
    ここで《病》という語は、制作者が抱えるゆらぎや複数性を単一的なものへと収束させる判断や表明の形式が持つ力であり、それらによって可視化された精神を意味する。とはいえ、病の比喩に基づく詩史の解釈は、状況そのものを詩の制作主体として中心化するタイプの認識と、そのつどの制作に内在する倫理的・能動的な思考の軽視を招きかねない。加えていえば、そこには解釈者自らの思考が「病んでいない」ことへの無根拠な確信が付随している。
    前日に遅くまで原稿を書いていたため、始業の八分前に起床し、間に合う。五月の実績資料の作成。同僚との共有不足で、まったくおなじ資料を二人でつくっていたことが判明。次回からは事前に担当部分を決めておくことにしたものの、どちらがそれについての相談を切り出すかも、決めておく必要があったような気がする。
    資料を上司へ提出し、入浴。大家に家賃を払いにいくと、一日遅れただけなのに若干の小言をいわれる。隣の部屋の人が先々月から長野の実家に帰っていて、家賃を払うためだけに東京へ来ているという。隣人の気配がなかったのはなんとなく感じていて、その頃から謎の虫を部屋のなかで見かけるようになった。正体を突き止めようとウェブ検索を駆使したが、該当しそうな虫の名前とその名前で出てくる画像が一致せず、ゴキブリ用の駆除スプレーをかけるといなくなるので、ゴキブリの仲間だと判断する。先月から急に虫の数が増えた。原因はいくつかあるとおもう。大家がアパートの周辺に食べ物を撒くようになり、そのせいでハトやスズメやネズミ、やたらとでかいカエルが家の近くをうろついている。食事を買いに外出すると、階段の近くでカエルを踏んでしまったり、脂のようなものでギトギトに毛羽だったハトに追いかけられたりした。
    夜、キーボードを伝って謎の虫が手首に這い上がろうとしてきたので、近所のスーパーでバルサンを二つ購入し、焚く。時間まで近所を歩き回っているうちに、知らない公園を発見する。すべり台が赤いテープでぐるぐる巻きにされていて、乗り越えた跡のようなものがテープのたわみと劣化具合で確認できる。職場から電話があり、資料の内容について確認が入る。外出をとがめられたので理由を話すと、煙で追い出しても根本的な解決にならないといわれる。となりの駅まで歩いてしまう。横断歩道を渡り終えたとき、うしろから大きな声の人がやってきて目の前の人の視界を隠した。頃合いを見て家に戻り、具合がわるくなる。

    東京都・高田馬場
  • 6月24日(水)

    いつもより早く目が覚めたので、遠くのコンビニで揚げあんぱんとエナジードリンクを買う。家に戻ると、公園のベンチのひじ掛けに食べかけのリンゴと食パンが置いてあった。コンビニに行くときはなかったとおもう。こしあんと炭酸の食べ合わせが悪かったのか、胃をやられる。シャワーを浴びてすこし眠り、スーツに着替えたあとで家を出る。東西線へ。アパートの前に飲み物をこぼしてできたような、うっすらと白い線が引かれてあって、近くを通りがかる人がそれを踏み越えるたび、あたりに散らばっていた虫の脱け殻がひとつに集まった。
    母親が勤めている病院の駐車場に熊が出る。親とはぐれたらしい小熊だった。小熊は車と車のあいだを隠れるように渡って、薬局の脇にある茂みのほうに消えていった。昔、友だちの家に遊びにいく途中、坂道で熊とすれちがったことがある。地元の熊は体毛が固くバサバサしていて、強いにおいがいつまでも消えずにあたりに残る。同じ年、妹の同級生が神楽の稽古の帰り道で小さな熊に追いかけられた。それから一〇年後、実家の近くにある美術館でやっていた岡崎乾二郎展を観に行って、人間の理性や芸術についての講演を聞いていたとき、窓の向こうをふつうサイズの熊が歩いているのを見た。帰りに警察が来る。道沿いの竹やぶが破壊されていた。裏手の山には崖をのぼるカボチャの蔓や四角く掘られた穴があって、金色のトンボが何匹も飛び交っていた。
    仕事終わりに会社をやめた先輩と食事。職場を出て駅に向かう途中、同期から仕事が嫌すぎる、三歳になりたい、と連絡がくる。道のあちこちで、割れた石が花のように咲いている。おたがいに暗いことを言い合っているうちに、窓のなかで抱き合っている人の姿が通りから見えた。ワンタンとビール。先輩が待ち合わせに三〇分ほど遅れる。店が閉まったあと、地下の喫茶店に移動。赤ワインのグラスを倒されて下半身が真っ赤になり、先輩の家で洗濯してもらう。シャワーを借りて、大理石の床みたいな石鹸で体を洗う。豆菓子とビール。ハングルのパッケージで味の説明が読めず、甘いことだけがわかる。寝室に天井近くまで背が伸びている木があって、先輩がテレビに話しかけると、焚き火の動画が流れはじめた。タバコをもらうと急に酒が回り、気持ちわるくなってきたので目をつぶる。翌朝、頭痛で目を覚ます。寝間着に借りたTシャツと下着、着替えを入れる用のトートバッグをもらって、代わりに昼食代を出す。親子丼。その頃になって、先輩がずっと斜め向かいの席についていたのに気がついた。駅の改札口で別れたあと、焚き火の光に照らされながら眠っている自分の写真が送られてくる。
    前回の「日記」で引用したソンタグの著作について、大学の後輩から指摘が入る。調べなおすと、該当箇所では《人種》についての記述があまり強調されていない。というより、《人種》をめぐる問いとして解釈するのは、すこし強引だったとおもう。《結核》についても同様で、ソンタグがユダヤ人に対する病の比喩も、そのあとで述べられる《癌》のほうが(ナチス・ドイツによって用いられた語として)適切だった。いわれたとおり、たしかにミスリードだったと答えると、――おつかれさまです。結局、鈴木さんも《病気》だったんですよ! とフォローされる。話の流れで、今回から書き上げた「日記」とメモを知り合いに送り、添削してもらうことになった。

    東京都・飯田橋
  • 7月17日(金)

    昨日食べた麻婆豆腐が効いたのか、痛みで目を覚ます。提案資料作成、あんかけうどん。処理が重くなった端末の整理していると、十年前に書いた文章が出てくる。小さい頃に父親から聞いた家の話を思い出しながら、いつか小説を書くときのためにまとめておいたもの。《二百年ほど前に大きな飢饉が起きて、当時この家に住んでいた人が庭に降りてきた鶴を食べて呪われたせいで、子どもが生まれなくなった。親戚の子や身寄りのない子を養子に迎えて、大人になって所帯を持つと、またべつの家から子どもをもらってくる。それを何代かくり返して、ようやく子どもができるようになったのは、曾祖父のひとつ前の代からだという》。いまなら庭に鶴が降りてくることがあっても、捕まえて食べようとはしない。もっとささやかに取り返しのつかない出来事で、解けない呪いに見舞われることもあるだろう。ゆるくなったドアノブのネジを閉め直したとき、中にいた虫を閉じ込めてしまうとか? 妹が帰省を親に打診して、断られる。前に住んでいた人たちが残していった部屋が蔵の近くにいくつかあって、入り口は木の板でふさがれていたとおもう。最後まで外の空気を吸うことなく、取り壊しに巻き込まれてしまったのだろうか。
    後輩(添削担当)から連絡がきて、手直しされた「日記」が送られてくる。すこし話したあとで、『現代詩手帖』で発表したテキストについての感想をもらう。
    ――自分は一平さんのよい読者にはなれないとおもいました。表現のなかで明示も暗示もされないこと、《無症候性》によって不可避的に表現されてしまうものとしてのコロナの《形象》という見立ては、けっこう説得的ですね。でも、この指摘は書き手の側での批判可能性を事前に牽制してしまうというか、それこそ表現の「自粛要請」をしている気がする。
    ――やっぱりそういうとこあるよね……。
    ――全体的にはおもしろかったです。山本さんも言ってましたけど、最後こう来るかっていうおどろきはたしかにありますね! でも、動員のくだりはそんなこと言われても……って感じになりました。一平さん自身がこの問題をどう引き受けていくかなんですよね。なのに、それを書き手全員の《具体的な行為の水準》を持ち出して「一般化」してしまうのは、けっこう抑圧的ですよ。
    ――詩でなにが語れるか、みたいな気持ちになれなくて。
    ――そういえば手よくなりました? よくなったら、今度みんなで集まりましょう。
    右手が突然ふくれ出したのは、六月の半ば、梅雨空の暑い日差しを避けて、台所に敷いた布団の上で昼寝をしているときだった。手のひらに熱っぽさを感じて目を覚ますと、手首の付け根のあたりから寸胴にふくれている。虫刺されの跡のようなものがまん中にできていたので、謎の虫に刺されたのだとおもう。皮膚の下には冬瓜のような青っぽい色味が入っていた。夏になるといつも体のどこかがおかしくなる。何年か前に詩集の刊行記念会を開いたときは、当日の朝に左腕の肘のあたりが紫色にただれて、笑っている顔のような模様ができた。薬をぬって包帯を巻く。会社の同期の家に泊まりにいって、その汁は抜いたほうがいいといわれる。裁縫針に除菌スプレーをかけて刺してみると、ぱっと手のひらの上に水のようなものが広がった。なめてみるとすこしだけ鉄の味がして、小学校の水飲み場の蛇口から出てくる水みたいな味だと同期がいう。夏場は外を走り回っていた子どもたちが列を組んで、順番に水を飲み干していった。

    東京都・高田馬場
  • 8月9日(日)

    隣の人が拠点を地元へ移すことになり、大学の同期と後輩を呼んで退去の手伝い。隣の人の家族がトラックをアパートの向かいに停める。持ち帰る家具を荷台に積んで、捨てる家具は大家の駐車場へ運ぶ。右手が使いものにならなかったので重い荷物を二人に任せて、代わりに部屋の片付けをする。壁紙の一部がはがれかけていて、中に絵はがきが刺さっている。本棚には語学と演劇の本が多く、気になるものをいくつかゆずってもらう。お昼から始めて夕方頃には作業が済んだ。食事をごちそうになり、隣の人が思い出を話し始める。あの部屋に十三年ほど住んで、人生の三分の一近くをそこですごした計算になる。もともとは女性専用のアパートだったのに、鈴木さんが引っ越してきておどろいた。たまに大家さんに呼ばれて、鈴木さんや前に住んでた○×さんとご飯食べたけど、東京に来てそういうご近所付き合いするとはおもわなかった。一回だけ、鈴木さんとだれかがギター弾きながら大声で歌ってて、苦情入れたことがあったけど。それはたぶんオレですね……と同期がいった。
    ――(隣の人)あ~、鈴木さん朗読してくださいよ。
    ――(作者)え!
    ――詩を書いてるって、前に大家さんから聞いたんです。
    ――(後輩)一平さんとこの大家どうなってるんですか?
    しばらくして、書きかけの詩を朗読させられる。

       だ れか きて  わ  か ら
    夜道の人に冷夏の帰路が、忘れる体を分からせて
    な   い  す が     た    で
    空が指を組む、砂を固めてつくる種、わるい芽を
             ね    が  う
    つんで、鳴きながら家の屋根を描く、向こうでは
    ぴ  た り    と  や む
    冷えた石の裏を流れる息が、鳥の影を引き受けて
          あ め    を ね じま げ
    矢印のように草を打つ、その奥で眠る地面に手を
             る  あ お い
    ついて、古い器に、溶いた雨の色を重ねていくと
               か  ら     だ
    あたらしい器ができる、忘れる体が、それを叩く

    隣の人が帰ったので解散し、三人で周辺を散歩。道に迷って、見つけたラーメン屋に入る。カウンター席が少なく、代わりにテーブル席が四つある。店主はずっとニコニコしていて人当たりがいい。和服を着た女とスーツ姿の男が入ってくる。女は四十すぎ、男は還暦を迎えたぐらいの年齢に見える。店主が注文を取りに来る。女が手慣れたような感じで、――フルーツとジュースをください、と答えると、店主がよく冷えたリンゴとメロンを切り分けて、瓶に入ったオレンジジュース(?)といっしょに持ってきた。
    ――(後輩)どういう店?
    ――(同期)思い出した。なんかさ~、オレもこのあいだ飯食ってたとき、へんなことあったんだよね……。
    五月の半ば頃、同期が昔のバイト仲間と三人でお酒を飲みに行った。二軒目がビルの地下にある、こじんまりとした居酒屋だった。あるとき、飲んでいたうちの一人(Aさん)と、おなじタイミングで外のトイレに立った。入るときは気がつかなかったが、トイレの脇にガシャポンが並んでいて、全部の機体が白いガムテープで隠されていた。中に景品は入っているらしく、なにが入っているのか確認しようとしていると、Aさんがトイレから出てくる。二人で席に戻る途中で、席で待っているもう一人(Bさん)についての話をする。
    ――(Aさん)ずっと彼氏できないんだって。
    ――(同期)そうなの? いらないとおもってた。
    ――なんか、あんまり続かないらしい。前に、どうしたらいいんだろうね~っていわれて、自信がないんじゃないかって。だから、自分を好きになることから始めるって。
    ――筋トレでもするのかな。大事な話だね。
    ――でもさ~それ、だれでもいいから人殺したいっていって、自殺するのといっしょじゃん。
    すこし考えて、全然ちがうのではないかとおもった。そのとき、向こうから人が歩いてくるのが見えて、それがBさんであることがわかったので話をやめた。あいさつをしてすれちがい、同期が振り向くと、Bさんはその場に立ち尽くしたまま首だけをこちらに向けて、じっと二人を見つめていた。話を聞かれたかもしれない。煙草を吸いにいくふりをして、店に戻らず地上に出た。すると、Bさんもうしろをついてきたのか外に出てきて、見向きもせずにそのまま闇のなかに消えていった。
    ラーメン屋を出て、通りを迂回して住宅街に入る。暗闇のなかから緑色のフェンスが現れて、向こうに小学校のグラウンドが見えた。小学校の輪郭に沿って道路がのびている。角を曲がると、街灯の下でうごいている影があった。
    ――(後輩)蝉いますよ! グラウンドの土から出てきた蝉の幼虫が道路を横断しようとしていた。表面がぬれたように光っている。三人で蝉を囲うようにしゃがんで観察していると、後輩が急にマスクを外して、無表情で移動を続ける蝉の目の前に敷いた。マスクの上に乗ったので、近くの木まで運んで、蝉を幹のくぼみに引っかける。落ちないように下に手を置いて待っていると、上に向かって登りはじめた。後輩がマスクをつけ直す。
    ――(同期)えっ、蝉に使ったマスクまたつけるの?
    ――(後輩)さすがに大丈夫でしょ~七年自粛してたら!
    コンビニで酒を買って、飲みながら三〇分ほど歩くと駅に着いた。行き先が同じらしい二人についていって遠回りする。次の電車に乗り換えたあたりで記憶を失い、気がつくと終電がなくなっていた。

    東京・高尾
  • 8月31日(月)

    高校の同期と会いに上原へ。駅の改札口で待ち合わせて、同期の知り合いがやっている居酒屋に入る。出会い頭に手の包帯を笑われる。外出前に針を刺して水を抜いても、しばらくすると開いたはずの穴がふさがっていて、抜いた分の水がたまっている。腫れはすこしずつ引いているとおもう。心なしか腫れた部分は触るとひんやりしていて、右手を額に置いて眠ると気持ちがよかった。
    店員の人は、同期といっしょの劇団で芝居をしていたらしい。同期の芝居は何回か観に行ったことがあるので、店員の人の芝居もそのときに見ていたのだとおもう。高校時代の思い出話をしていると、「晩秋」(ガガガ SP)が爆音で流れはじめる。店を出て、二人で新宿まで歩く。時計台を目印にすると同期が咎めてきたので、地図を使わずにデタラメな方向を歩く。公園を見つけてすこし休んでいると、スマホにオンライントークの通知が入る。
    ――(作者)なんか大学の同期が飲み会やってる。
    ――(高校の同期)お〜、紹介して!
    ――今入るから待って!
    大学の同期と、後輩三人(一人は添削担当)がオンライン飲みをしていた。高校の同期と片耳ずつイヤホンを付けて参加する。
    ――(作者)ゲスト紹介します! (高校の同期)です。
    ――(高校の同期)こんにちは〜、お世話になってます!
    ――(後輩)どうも〜! 一平さん地元にいるんすか?
    ――(作者)新宿まで散歩してる。
    ――(添削担当)一平さん、「日記」が近づくと徘徊するやばいやつになってますよ! 来週ですよね?
    ――(作者)べつに「日記」にしようとおもって歩いてないから。
    同期がコンビニのトイレへ行っているあいだ、信号機が妙に低い場所に設置されているように感じたので、ジャンプして手が届くかどうか試す。思いのほか届かず、スマートフォンを地面に落とす。画面がバキバキに割れてしまう。スクリーンショットを撮ってグループチャットに貼り付けると、ひび割れのないきれいな画面になる。新宿を意識しながらてきとうに歩いているうちに、大学の同期の最寄り駅にたどり着く。記憶を使って同期の家の前まで行く。エレベーターで五階にあがり、同期の部屋のインターホンを押す。スマホの画面に映っていた同期がびっくりしたような顔で振り向いて、画面から消える。インターホンを何度か押す。玄関のドアが開いて、さっきまで画面の中にいた同期が出てくる。
    ――(大学の同期)隣の人いるから……。
    ――(作者)(大学の同期)の家に着きました。
    ――(高校の同期)こんにちは〜。
    オンライン飲みを続ける同期(大学)のうしろで、ベッドを占拠して酒を飲む。真面目な話をしているようなので、ふざけて暴れる。ベッドの足が折れて、衝撃で腰を痛める。本を積んで支えにしても、暴れるとすぐに崩れてしまう。残った足を切り離してベッドを床に敷く。同期(大学)が即興で曲をつくってみんなで歌う。寝るまでオリジナルの迷信を順番につくり、同期(高校)が提案した《利き手で人を殴ると寿命が短くなる》が優勝する。いやな夢を見る。
    翌朝、顔を洗って酒を飲む。三人とも暇なので、どこに行って遊ぶか話し合う。同期(大学)の提案でミヤシタパークに決まる。同期(高校)が着替えたいといったので、いったん解散してから渋谷に集まる。同期(高校)からドタキャンの連絡が入り、同期(大学) から三〇分遅れると連絡が入る。集合時間の二〇分前に着いてしまったので、家から持ってきた山田亮太『オバマ・グーグル』(2016 年、思潮社)を読む。同期がやってきて、二人でスクランブル交差点を渡る。右手に曲がり、高架下を過ぎると《MIYASHITA PARK》の文字が見えてくる。開放的な空間の向こうから人が流れるように歩いてくる。一階の飲み屋街がたくさんの人出でにぎわっている。真っ赤な色の掲示物があちこちに貼られている。笠井さんが近くにいるらしいので呼び出す。三人で四時間近く歩き回る。建物全体が巨大なモニュメントのようだとおもった。

    みんなのミヤシタパーク※

    落書き禁止「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」違反者は、処罰されます。 見つけた人は警察に通報してください。/この遊歩道の下には、渋谷川が流れています。/宮下公園は、誰もが自由に遊んだり散策できる憩いの場です みなさんが、気持ちよく使えるように お互いにルールやマナーを守りましょう/ NO SMORKING 禁煙 喫煙は指定の喫煙所をご利用ください。/お知らせ 渋谷区立宮下公園では、安全管理のため、 以下の物を使用する為に持ち込むことを禁止ます。 ご理解ご協力をよろしくお願いします。 ●花火・火薬などの火器 ●タバコ類(喫煙) ●銃及び剣類(モデルガン、模造刀、木刀、竹刀を含む) ●野球、テニス、サッカー、ゴルフ等の球技の用具類(ビーチスポーツを除く) ●テント・タープ ●のぼり旗類 ●拡声器、メガホン等 ●ラジコン等(ドローン含む) ●ブーメラン、フリスビー類 ●凧、バルーン類 ※その他、安全の支障になるものは持ち込みできません。 ※スケートボード、インラインスケートは、スケー ト場以外では使用できません。/お知らせ 渋谷区立宮下公園では、快適な公園利用のため、以下の行為を禁止します。ご理解ご協力をよろしくお願いします。 ●施設を損傷、 汚損する行為 ●焚き火などの火器の使用 ●貼紙や貼り札、または広告の表示 ●大音量の演奏や合唱、演説 ●ビラや物品、飲食物を配布 ●工作物の設置 ●寝転がるなど 来場者や歩行者の妨げになる行為 ●長時間のベンチ等の使用 その他、下記行為をしようとするときは、管理者の許可が必要です。 ・物品の販売その他の営業行為 ・業として写真又は映画の撮影など ・演説または宣伝活動をすること ・集会、展示会、競技会その他これらに類する催しのために公園の全部または一部を独占して利用すること ・募金、署名運動など ・興行を行うこと/きゅうちゃん Kyu-Chan 2020 Colliu 名前の由来は宮下公園の「宮(きゅう)」から来ています。/新型コロナ あんしんチェックインサー ビス/この施設の利用者などから新型コロナウイルスの感染が確認された場合、 接触の可能性がある方に LINE でお知らせします。/ A year in the life shibuya/Takeshita Street Welcome to Harajuku / WOMEN’S RUN/渋谷バル SHIBUYA コミュニティ BAR/純喫茶&スナック思ひ出。/力士めし萬/鶏・かしわ・焼鳥 布袋/精肉 大黒 牛 豚のアパート/魚利喜 魚貝百貨店/北海道食市/東北食市/関東食市/横浜中華食市/ 北陸食市/東海食市/近畿食市 2 /近畿食市 1 /中国食市/四国食市/韓国食市/九州食市 /沖縄食市/エレベーターのご利用は 最大 4 名 とさせていただきます。 できるだけ 離れてご利用ください。/&BASE WORK STYLING / adidas / LOUIS VUITTON / GUCCI / TADANORI YOKOO for GUCCI / DADAÏ THAI VIETNAMESE DIM SUM / BALENCIAGA / PRADA / KITH / BEING HERE MAKES YOU ONE OF US. / or / Any 2020 Stone Designs 多様な人々、人種、ジェンダーが融合して新しい文化をつくる渋谷を象徴します/エスカレーターでは間隔をあける/歩かない 手すりにおつかまりください/進入禁止/ COACH/KITH. TREATS. / KITH. KIDS/EYESTYLE / SOPH. / FIRST HAND / TOKiON /国籍や人種、言語、宗教問わず、花を贈る人間の心は万国共通である。/ CAFÉ KITSUNÉ/Hender Scheme スキマ/ GUCCI / VISIONARIUM THREE / Luis Vuitton “VIRGIL” NIGO / GRIT NATION / REDUCE REUSE REMAKE ムダのない未来へ adidas / adidas Belista のアパレルはユニークなシルエットで強気のフェミニンスタイルを演出/ Positive Attitude for Transformation /完全燃焼の夏にしろ REDAY FOR SPORT ROLA / BALANE/STYLE / and wander / CONVERSE STARS/SOCIAL DISTANCE SOCIAL DISTANCING /社交距離/社交距离/人との距離をあけて、 新型コロナウイルス感染症の 拡大防止にご協力ください。 2m /防犯カメラ作動中/検温実施中 感染拡大防止のため 入館時検温を実施しておりま す。 体温を測定いただき、 平熱であることを確認の上、 ご入館ください。/黄色のセンサー部分に手首を近づけて測定してください。/ SHOW YOUR COLOR #FFFFFFT.zip / The Editorial /年に一度、誰にでも誕生日はやってくる。/あの人を想うあたたかな気持ちが たくさんの人につながっていきますように。/ eggslut / G-SHOCK / L&HARMONY / uka / gram / DENIS MADE IN TOKYO / NOSE SHOP /他の誰でもない、あなたの鼻が主役のお店。/インディペンデントでハイグレードなフレグランス専業メゾンを 世界中からセレクトしてお届けすることで、 最上級の香りと共に暮らす喜びや楽しさをお伝えします。/ Follow your NOSE.(自分の鼻を信じて進め) / ALG BRIEFING / MIYASHITA CAFE+SOFTCREAM / KISSHOKARYO KYOTO / comma TOGO / jamba /パンとエスプレッソとまちあわせ/たまご はじめ ました/こちらの 待ち合わせスポットはとりかごと言います/ HARIO Lampwork Factory /もし割れてしまった場合はお直しもできます/ HIGHTIDE STORE / TINY DWELL SASAKI RYOHEI exhibition /訪ねたことのないサンフランシスコに行ったつもりで、 活動拠点の福岡市内を歩き、坂に建つ家を観察し描いていく。/制作背景が見えてくるような道具や端材といった、オブジェクトと合わせてお楽しみください。/ KITKAT Chcolatory / THE SHIBUYA SOUVENIR STORE /渋谷区にくらす・はたらく・まなぶ人々が渋谷の魅力を 伝える“渋谷のお土産”/ペットボトル 100%再利用 サスティナブルバッグ/生殺与奪の 権を他人に握らせるな!! /倍返し饅頭/ MOOSE KNUCKLES / SSZの仮店舗 TEMPORARY STORE OF SSZ / L’ÉCHOPPE /エスカレーターでは間隔をあける/歩かない 手すりにおつかまりください/進入禁止/ FOOD HALL / TACO BELL / New York Ramen KUROOBI / PANDA EXPRESS / Mcdonald’s / MAGURO MARKET / Valume CAFE&BAR / NEW LIGHT /中華 青山 シャンウェイ/海南鶏飯食堂 5 /うしとら STAND / GRAN SOL TOKYO /周囲の方と距離をあけて ご利用ください physical distance PLEASE KEEP APART / PIZZAとナチュールワイン戦隊 DRA エイトマン/ミヤシタ 成ル/渋谷ワイナリー東京/ご利用のお客様に マスクを プレゼント中です ☆ / Small flowers blooming on the earth 2020 福津宣人/筋肉食堂/高タンパク 低糖質 低脂肪 低カロリー 今日の食事が明日の 自分のカラダを創る/ EEEEEEEEENNNNNNNNNSSSSSSSSSTTTTTTTTTUUUUUUUUUDDDDDDDDDI IIIIIIIIOOOOOOOOO /
    F.A.D JOINT EXTHIBITION / F.A.D 最高―!! / FAD! 最高!! /こうや、そうた、かざし、 Dy、ダイソン、すぐる、りょーが/좋아요❤️ /#FAD しか勝たん! ミリア❤️ / FAD しか勝たん!! / F.A.D しか勝たん! /チョアヨ/チョアE /宮下パーク/希実❤️ /좋아~❤️ 리자・가나/ F.A.D /みやした/死ぬ事以外かすり傷/さばくのはおれのスタンドだ/中川パラダイス/「SAIKO-Y ちゃんねる」 TOP DANDY / Porn hub / fuckin’ CORONA / To がんみ❤️ きましたお! toribird_go❤️ Harumi /目指せ甲子園!! /夏はこれから! FAD 最高 あつキ/弱気は最大の敵!! /ぱおん/かざし/ En THE BEST❤️ / EQUALAND SHIBUYA / TRUST /信じることからすべてはじまる。/信頼できる人やコミュニティが紡ぎ出す思考のつながりがこれからの時代のスタンダードな価値観となっていきます。/手指を消毒してください/作り手と消費者は、衣服に対する当たり前の意識をアップデートさせなければならない。/プラスチックと賢く付き合うってなんだろう? /太平洋にはごみが集まってできた「ゴミ諸島」が出現しています。/一人でも多くの方が、地球環境問題について考えるきっかけになればと願っています。/手指を消毒してください/現在、海へ流入するプラスチックゴごみは世界で年間 800 万トンと推計されており、その約 8 割は、内陸から流れ込んでいます。/環境汚染だけでなく、問題が複雑に絡み合う現代にあって、全ての課題を 0 か 100 で議論し解決することは不可能で、一時のアクションで持続可能な未来は作れない。/なくても困らないものを「断る」こと。「いりません」の一言は、自分から変えていくという、社会課題の解決に貢献していくポジティブな意思表示なのだ。/バイオマスフィルムを使用していることがお客さまにご理解いただけるよう、ロゴをつけました。/まるごとやさしい毎日へ/ポテトとジンジャーで世界 を平和にする/せんべいを、おいしく、かっこよく/明日わたしは柿の木にのぼる/手指を消毒してください/ NEW ERA / ellese TOKYO / MINOTAUR INST. /臭わない、 を着る。/ BOOK×写真×CAFE 天狼院カフェ SHIBUYA /人生を変える書店/お客様 が求める有益な情報が「本」であり、その情報を最適な形で提供するのが次世代の「本屋」の役割である、と定義をしています。/ instant / DAYZ / SAI collection / Campbell’s CONDENSED TOMATO SOUP 12・23・80 Andy Warhol/Face Records / GBL /あなたがいちばん最初に見た、ジブリの作品は何ですか?/ MAMMUT /エスカレーターでは間隔をあける/歩かない 手すりにおつかまりください/進入禁止/ NO DRONES!/はなれてあそぼう 2 メートル Keep Your Social Distance はなれていてもできるあそび /ご注意 テーブル以外の利用はご遠慮ください。 物を落とさないようにしてください。/芝生ひろば LAWN FIELD 公園から落下する恐れのある遊具 (ボールなど)の使用は禁止します テントなどの工作物の設置は禁止します 芝生を傷める恐れのある履物 (ハイヒールなど)の使用は禁止します 長時間の芝生ひろばの占有はお控えください 芝生の管理上、定期的に散水する場合があります その場合は速やかにご退場下さい その他管理上、 利用を禁止する場合があります/ WARNING 防犯カメラ作動中/ MULTI-PURPOSE SPORTS FACILITY 〈多目的運動施設利用のご案内〉/ BOUL-DERING WALL 〈ボルダリングウォール利用のご案内〉/BOARD PARK 〈スケート場利用のご案内〉/区民以外の者が使用する場合の使用料は、本表使用料の倍額とする/登るな危険/こちらのベンチは ご使用をお控え下さい/新型コロナ対策として 間隔をあけてお座り いただいております/ SHIBUYA HACHI COMPASS 渋谷の方位磁針| ハチの宇宙 鈴木康広2020 /自販機専用 公園のゴミ箱ではありません。 自販機以外のゴミは 入れないでください。/自販機以外のゴミは捨てないでください/このゴ ミ箱は缶、瓶、ペットボトル専用です。/ 関係者以外 立入禁止/ 多目的トイレをご利用の際は パークセンターへお声がけ下さい/新型コロナウイルス感染予防のため このスペースでの滞留はご遠慮ください/ NO DRONES!/STAFF ONLY /利用禁止 SOSIAL DISTANCE / VALLEY PARK STAND /ハシグチ リンタロウ zymotic electro plants, 2017 『発酵発電所』/いまではどういう働きなのかがある程度明らかになり、加工技術となっている「発酵」は、発見されるまでは、誰も知らないところで、勝手に起こっていた。/ The Chain Museum /この作品に対する他の人の感想を のぞいてみませんか/田村 琢郎 Lovers /恋人を愛する様に自分を愛し 恋人を見詰める様に自分を見詰める/ The Chain Museum /この作品に対する他の人の感想を のぞいてみませんか/東 慎也 Humans /人間を、絵に描く。 バカっぽさ、苦しさ、真剣さ、そしてやっぱりバカっぽさ。 全部丸ごと描く。/ The Chain Museum /この作品に対する他の人の感想を のぞいてみませんか/ STOP●前の方との距離を空けて並びましょうKeep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance/STOP●前の方との距離を空けて並びましょう Keep Your Distance / Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ Keep your Distance 間隔をあけてお並びください●適切な距離を保ちましょう/ 12 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 11 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 10 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● /9 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 8 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 7 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 6 Please Wait Here 番号 に沿ってお進みください● / 5 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 4 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 3 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 2 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / 1 Please Wait Here 番号に沿ってお進みください● / STARBUCKS COFFEE

    ミヤシタパークを出て、代々木公園に行く。笠井さんが帰る。コンビニで買った酒を飲みながら歩いていると、地図アプリに表示されていた予定到着時間がどんどんのびていく。もう一度ミヤシタパークに戻り、横断して反対側へ。代々木公園に着くと、荷物を背負った人たちが列をつくって並んでいる。列は公園の奥の闇に紛れて、どこまで続いているのかわからない。先頭で薬や絆創膏、お菓子のようなものを配っている人がいる。同期がその人に話しかけると、ホームレスの人たちへ給付金申請の手続きを呼びかけていたという。住所がなくても、特別に給付金申請のための住所登録ができるようになった、渋谷区では明後日までに登録する必要があるとのこと(注:作者が話をちゃんと理解しているかどうか自信がない。本人確認が取れて住所登録の見込みがつけば、給付金の申請ができる?)。

    すこし前に署名を集めて、総務省に要望書を出したらしい。NHK デモの帰り? と聞かれたので、同期が、――こいつ(=作者)が詩人やってて、二人でミヤシタパークに行って詩を書いてきたんです、と答える。「みんなの宮下公園」を説明して、かつての宮下公園ナイキ化についての話を聞く。詩ができたら読ませてほしいといわれる。今度の木曜日に adidas 前に集まって、公園課と交渉するという。
    しばらく話したあとで別れる。公園の奥から実況音声が聞こえてくる。運動場が見えてきてたくさんの人たちがトラックのまわりを何周も走っている。ちょうどいいスペースを見つけて、同期がつくった音楽を聴いたり、思いつきでつくった歌詞を乗せて歌ったりしながら酒を飲む。コオロギの鳴き声を身近に感じたので、写真に撮ろうとする。フラッシュの操作に手間取っているうちに同期が近寄ってきて、コオロギが逃げてしまう。ブルーシートの家が点々と並んでいる。汗をかいたので、暗闇のなかで服をぬぐ。水飲み場で体を洗う。大雨がふってきて、知らないマンションの駐輪場に避難する。排水溝から水があふれ出してくる。休めそうな場所を探して、同期の家まで歩いて帰る。一週間後、山本と次に書く原稿の打ち合わせをして、二人でミヤシタパークに行く。「みんなのミヤシタパーク」最終調整。見逃していた言葉を足して、消えてしまった言葉を削る。

    ※2020 年 8 月 30 日時点にミヤシタパーク(商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」、 公園「渋谷区立宮下公園」、ホテル「sequence MIYASHITA PARK」)内に存在した文字により構成した。
    本作品は、山田亮太『オバマ・グーグル』(2016 年、思潮社)所収の「みんなの宮下公園」 (2010 年)で描かれた場所の10 年後を舞台としている。 制作にあたり使用した文字はミヤシタパーク内の掲示物の他、商業棟内テナントの店名お よび店内掲示物を参照している。店内掲示物のテキストを使用した店名を以下に列挙する (五十音順)。
    adidas Brand Center / EQUALAND SHIBUYA / The Editorial / En STUDIO / KITH. / 筋肉食堂/ GUCCI / SAI collection / THE SHIBUYA SOUVENIR STORE /渋谷ワイナ リー東京/ FFFFFFT.zip / GBL /天狼院カフェ SHIBUYA / TOKiON / NOSE SHOP / HIGHTIDE STORE / HARIO Lampwork Factory /パンとエスプレッソとまちあわせ/ VALLEY PARK STAND / MINOTAUR INST.

    東京・渋谷
  • 9月22日(火)

    目が覚めて、LINEに温度感の高い仕事の話が来ているのに気がつく。午前中は「日記」の制作。昼頃に中華料理屋へ行って、麻婆豆腐とビール。追加で餃子とハイボールを注文する。奥に座っていたおばあさんが、炒飯を半分残したお皿を持ってレジに向かう。店員の人が、――いつもありがとうございます! といって、おばあさんを見送る。しばらくして、おばあさんが空になった皿を持って店に戻ってくる。
    高校の同期からLINEが来て、多磨霊園に集まることになる。産休で休んでいるべつの一人にも声をかけたという。急いで家に戻って風呂に入る。元TOKIOの山口達也が、酒気帯び運転の疑いで逮捕される。待ち合わせにニ十分遅れることを連絡すると、――なんもない駅だよ、と返事が来る。新小金井駅に着くと、本当になにもない駅で、旅行に来たような気分になる。同期の記憶を頼りに道を歩くと、公園が見えてくる。
    ――(同期)虫いたら帰るからね。
    ――(作者)あいつ(もう一人)いつ来るの?
    ――返信来なかった。てかさ~、コンビニどこにもないじゃん!
    ――え、なんも持ってきてないの。
    ――マクドナルドでポテトのL買ってきた。しおしおになったやつ食べる。
    しばらくして、多磨霊園ではなく野川公園であるのに気が付く。川に入ってなにかを採取している親子や、犬を連れて散歩している人が目立つ。遠くで、白い人間が四つん這いで歩いているとおもうほど巨大な犬を連れて歩いている人がいる。テントを張っている人も何人かいる。――これから雨ふるのにけっこう人いるね、とつぶやくと、同期が露骨に帰りたそうな顔をする。曇り空と青空が均等にまざったような空で、あまり見ない天気だとおもう。コンビニを探して歩きまわっているうちに、多磨霊園とは完全に逆方向の道となり、武蔵野の森公園をめざすことになる。
    コンビニでお酒とつまみを買って、空を見上げながら歩く。武蔵野の森公園に着いて、調布飛行場を横目に見ながら芝生のある場所を目指す。遠くで飛行機が何台も並んでいる。蝉が弱々しく鳴いている。ミヤシタパークの屋上で見かけた看板がある。さっきよりも犬の数が格段に増えて、すれちがいざまに近寄られる。自転車に乗った子どもが、――気をつけてください、自転車に乗っています、といいながら去っていくのが、同期のツボに入る。芝生のある広場に着く。レジャーシートを広げて酒を飲む。遠くの木の近くに座っていた子ども二人が、交互にこちらの方に走ってきて戻っていく。途中でやたらと大きい人が走ってきたかとおもうと、おそらく二人の父親らしく、同期のツボに入る。フリスビーを飛ばしあう二人組がいて、片方のコントロールの良さに感動していると、もう片方がどんどん公園の奥へと離れていく。そのうち、数百メートル単位の距離でフリスビーを飛ばすようになり、同期のツボに入る。ゆっくりと暗くなってきて、あたりをコウモリが飛び交うようになったので、公園を出ることにする。同期がトイレに行っているあいだに、残ったハイボールを飲む。足もとでビニール袋がガサガサと音を立てている。生ゴミといっしょに閉じ込められたネズミが、袋を食いやぶって顔を出していた。袋を足で動かすと、ネズミはすこしだけ身をよじり、空を見つめたままガサガサと足を動かすだけで、逃げずにいる。帰るまでに雨がふらなくて、よかったとおもう。
    「日記」を完成させて、後輩(添削担当)に送る。前回の「日記」を掲載した日から今日までのあいだで、カレーを食べた日に起きた出来事について書いたもの。後輩から、作中に登場する「みんなのミヤシタパーク2」(注:9月13日にミヤシタパーク前で行われたデモについての詩)内の引用部分に関する確認と、それとはべつの箇所で、プライバシー保護の観点からいくつかの指摘をもらう。数日にわたって書いたので、題名を「9月22日(火)へ」に変えて、松田さんに送る。酒を飲んだせいで眠くなり、一時間ほど寝る。しばらくして、松田さんから原稿の再考について返信が来る。
    ・「日記」は《昨日でも明日でもない、今日の空気の記録》を主題として参加を呼びかけた企画であり、それについてはこだわりたい
    ・数日にわたって書くのも感覚的に理解できるが、記述の時間の幅があると、他の担当者と重複する部分が出てくる
    ・(注:数日にわたって書いてしまうと?)全体がばらばらになっていく感じがあるので危うい
    ・今回の「日記」が「前回の日記の空気」をそのまま引き継いで書いていて、《今日の空気》とはちがう力点が置かれている
    ・そういうところがタイトルの表記にも出ているとおもう
    まとめは作者の判断なので、誤解がある可能性は否定できないものの、以上の理由から原稿を再考してほしい、といわれる。他にも同様の依頼をして、再考を許諾してくれた人がいるらしい。素材を増やすために、できる限り毎日カレーを食べていたことを後悔する。
    後輩(添削担当)にその旨を連絡すると、笑いながら電話がかかってくる。
    ――(後輩)あ~、そんなのあるんだね。よかったじゃないですか! 検閲を受けたって書けますよ。
    ――(作者)怒られるかな。
    ――だめだったら欠番になるだけなんじゃないですか? やりにくい詩人だとは、確実におもわれるでしょうね。
    ――え~、嫌なんだけど。
    ――やりやすい詩人になりたいなら書くのやめたら? だいたい、日付割り振られてるのにカレー食った日のこと何日も書いて、おかしいとおもわないのがおかしいとおもいます。
    べつのところから、ひと月寝かせていた原稿の催促が来て、対応する。
    ――(後輩)今回の「日記」についての話は、日にちの問題もそうですけど、「《今日の空気》が入ってない」と暗にいわれてしまったところがいいですね。
    ――(作者)《今日の空気》って、もうすこし日にち的な幅があるとおもってたんだよね……。
    ――べつに日数の問題をいわれてるわけじゃなくない? 《今日の空気》が強く感じられていれば、もしかしたら問題なく載ったのかもしれない、とかね。ちょっと話題ズレますけど、情動が政治的判断と密接に関わってくる感じが、かなり興味深いとおもいました。日記っていう表現形式のあり方も含めた話で、テキストが真偽の区別を破棄した次元で成立し、人間の情動を駆動させる装置として用いられるという事態について考えさせられましたね。これは政治的状況に向けて語られるタイプの議論ですが、けっこう抒情詩の問題でもあるとおもうんですよ。表現形式としての日記から、詩の話にもつなげられる気がしています。
    今年はたぶん類を観ないほどたくさんの日記が書かれた年です。それはコロナの流行がなかったら起きなかったことなので、一平さんが前に書いていたことですけど、コロナとの「共同制作」なんですよね。いろんな書き手による日記がいろんな媒体で発表されましたが、そこでは基本的に「その日に起きた出来事」が連続して書かれてあって、実際にかなり事実らしく読めるものが多い。でも、読み手はテキスト内部の情報に対する真偽の判断以上に、その「事実らしきもの」をとおして語られるものに注目してしまう。そのうちのひとつとして、「今・ここ」みたいな特定の場所と時間を伴った記述がもたらす、同期性を伴った抒情的な知覚が挙げられるとおもいます。つまり、《今日の空気》ですね。とはいえ、これは当たり前の話で、もともと日記は書き手自身のために書かれるものとしてあって、そこで日記は何ごとかを忘れないために、もしくは思い出すために書かれます。言い換えると、日記を書くことはそれを読んで思い出す過程、想起という行為が強く関わってくる。事実がそこに書かれてあることは必ずしも必要ではなくて、感情的な言葉だけがひたすら書かれていてもいい。そこには日付とのセットが重要な意味を持つのはいうまでもありませんが、想起が日記という表現形式の成立において不可欠な要素であるのなら、日記は記述から喚起される行為や感情の方をむしろ主題としている。
    ところで、この日記から完全に事実らしさへの装いというか、真偽の区別の判断を働かせる要素が完全に取り除かれたとき、その表現はおそらく抒情詩に近いものなのではないかとおもっています。だからこそ、最初に話した「真偽の区別を破棄した次元で成立し、人間の情動を駆動させる装置」としてのテキスト、について考えたくなったわけです。日記をめぐる話から、なにかを引き出せる気がしましたね。なんというかここしばらくのあいだ、みんなで思いおもいに詩を書いて興奮してるんだな~って。
    ――(作者)後半に関していうと、オレが前に飲み会で話したことと重なってる気もするな~。今はまだ、うまく断言できないとおもう。
    ――(和合亮一)いいのか 無かったことにされちまうぞ※
    ――(作者)正直、デモの詩は載せたかったな……。
    ――(後輩)どこかべつのところに載せたらいいんじゃないですか?
    「日記」用に書いたテキストを削除して、深夜まで今日の出来事を書き起こしながら、ZOOMの打ち合わせに参加する。半分酔っぱらっていたので、余計な発言をしないようにミュートをしながら議論を聞く。後半で発言できそうな話題が出てきたので発言すると、そもそも参加していたことに対しておどろかれる。
    ※書き直し前の「日記」で引用していた和合亮一(@wago2828)のツイート。
    (https://twitter.com/wago2828/status/1306948885495963649、2020年9月22日閲覧)

    東京・高田馬場
  • 10月14日(水)

    目が覚めて、両膝の痛みで立ち上がれなくなっているのに気がつく。昨日の帰り道に駅の階段から落ちた。そのときは内出血を起こした肘の方が気がかりだったのに。風呂に入って、出社までのあいだに原稿を書き進める。後輩(添削担当)から聞いた「日記」についての話は、そこからさまざまな問いを引き出すことができる。文芸誌やWeb上での「コロナ禍」を題材とした日記の氾濫は、SNSやブログといった日記的な媒体がすでに存在していたにも関わらず、あらためて日々の出来事や感想を書き記す技術が「日記」であることを強調するかたちで書かれ、発表されたという事態を意味する。ひとまずは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う社会状況および生活環境の変化によって、私たちの日常が非日常へと変わり、日常を書くことそのものが価値のあるものとして表面化したという事実は、とりたてていうまでもない。

    日常が非日常化することで日記の需要が高まる傾向は、日本近代史では第二次世界大戦期に代表的な先例があり、兵士による従軍日記や、銃後の人々によって書かれた日記が挙げられる。西川祐子『日記をつづるということ 国民教育とその逸脱』(2009年、吉川弘文館)によれば、戦時期の日記は《戦争という非日常な事件が大きく反映し、退屈なはずの日記文の内容が生死とかかわってドラマチックになり、それを記述する文体も切迫した調子となりゆく傾向》があると述べられている(180頁)。この指摘は感覚的に理解しやすい。戦時中はしばしば兵士に対して日記を書くことが奨励されたし、学校教育でも日記はさかんに取り入れられたらしい。当然ながら、どちらも上官や教師という外部の視点の介入があり、さらには日記への介入をとおして書き手(兵士や児童)の内面を監視し、場合によっては「国民」としてのあるべき態度を強制され、それにふさわしくない感情や行為が書かれれば添削が入った(規範的意識を書記行為を通じて書き手に定着させようとする試みには、言文一致運動における「標準語」開発に共通する単一的な国民精神への志向もあるだろう)。そして、このような規範的意識の内面化は、しばしば書き手自身が主体的に推し進めているかのように仕向けられた。いわば、書き手の側も「書かれるべきこと」がなんであるのかを理解し、それに向けて自らの内面を律していくこと、みずから望んでそのような内面を獲得していく方向性がありえた。西川の著作に戻る。《戦時下においては、従順な国民を育成するだけでは不足なのであって、非常時体制にあって行動する主体として積極的に戦争参加する国民、つまり国家の戦争において自らすすんで死ぬ国民が必要とされる。近代の日記が行う主体形成教育に国家が着目しないはずはない》(213頁)。

    戦争末期には紙不足により日記帳の流通が停止する(厳密にいえば、まったく売られなくなったわけでもないらしい)が、敗戦から1年を経た1946年には、博文館の当用日記が早々に発行されたという。当時の記録によればその発行部数は20万部にのぼり、紙の配給が限られていた状況を踏まえると、戦後も日記を書くことは国家的に強く奨励されており、国民もそれを求めていたと見ることができる。戦後の学校教育でも、一貫して日記の制作と指導は行われた。そこでは生徒の自主性を重んじつつも、やはり教師による介入と添削は絶えず存在し、「教育的に」ふさわしくない表現があれば、程度の差こそあれ、書き直しを要請された。それについて、西川は川村湊の『作文のなかの大日本帝国』(岩波書店、2000年)を引用しながら次のように総括する。《たとえば西洋語のサブジェクトが「主体」であると同時に「臣下」の意味をもち、呼びかけに応えて自発的参加をする主体であることが明らかになった現在、国民の主体的参加がなければありえない近代の総力戦において能動的な国民となり、すすんで死地に赴く兵隊となる教育がなされたのと同じ方法が、戦後再編成のための国民教育に用いられた》(233頁)。

    規範の内面化が自らの意志に基づくものであることを主体に錯覚させるための、教育装置としての日記。それは、他国の事例ではあまり見られない、日本独自のものであるだろう。当然ながら、言語が主体の思考を伝達させる透明なメディウムであるはずはないし、書かれる上で生じる虚構化の過程を日記が免れることもありえない。しかし、主体に対してみずからの内面を言語化するよう強制するにあたって、日記はそこで書かれた内面が「虚構ではない(かもしれない)こと」の線をギリギリのところで主体に迫る。加えて、それは日記が「虚構ではない(かもしれない)こと」をみずからの表現の条件に据えている点で、幾重にもねじれてしまっている。おそらくそこに、日記が詩歌や小説といった「正統な文学ジャンル」と同等の位置を持たないこと、あるいは「正統な文学ジャンル」として定義化しようとする試みを決定的に不毛なものにさせる要因があるだろう。

    「コロナ禍」において日記の制作を国家が推奨したり、そのようにして書かれた日記に対して直接的に権力が介入したという事実は、筆者の知る限りでは確認できていない(教育現場において「コロナ禍」におけるみずからの生活を日記で書くように課された事例はあったのかもしれない)。しかし、「コロナ禍」以前の日常とそれ以後の日常との連続性に(「戦前ないしは戦中と戦後」のように)断絶を加え、後者を「新しい生活様式」として編成しつつ、新たなる様式への適応を国民に要請する日本政府の身ぶりが日記の氾濫に拍車をかけた側面は、否定できないようにおもう。そしてまた、日常なるものの断絶に向き合い、変化を被った生活にみずから慣れ親しんでいくまでの過程を記録することが意義あるものとされるにあたって、日記という表現ジャンルが用いられたということは、書かれたものが文学的なジャンルとして位置づけられることをあらかじめ回避した上で、だれに強制されたわけでもなく書くことを通じてみずからの認識を教育し、それを他者の視点に向けて開いていくことへの欲望が、すくなからず書き手の側には存在していたのではないかとおもう。

    仕事がおわって、『灰と家』の在庫を渡しに山本の家に行く。スーパーで夕食の材料を買うとき、山本に小銭を出せないか聞くと、――きれいな小石しかない、といわれて、財布に入った乳白色のきれいな小石を見せられる。鍋を食べながら、100万回再生された猫の動画や山本がハマっているYouTuberの動画を観る。このあいだまでKAATで上演されていた地点の演劇『君の庭』についてのレビューで、題名が『俺の庭』と書かれている記事を山本が見つける。日記を書き終えて、後輩(添削担当)に送る。しばらくして後輩から返信が来る。

    ――日記の話については今後応答しようとおもいますが、とりあえず個人的には、冒頭がけっこう気になるな~、って感じかな。もうちょっとやんわりした表現というか、たとえば駅の階段で転んでケガをしたとか、そういうのでいいかもしれません!

    東京・早稲田
  • 11月5日(木)

    機械の動きを見て笑っている夢を見る。一週間ぶりの在宅勤務。部署の先輩が異動になる。山本・hさん・なまけが三野(新)さんと沖縄に行って、戻ってくる。滞在中に撮られた1,200枚ほどの写真が共有される。以下、山本撮影。久高島で撮られたらしい海や岩、クバ(ビロウ)の写真。海岸で妙なポーズを取っているhさんの写真。海面を撮る三野さんの写真。でんぐり返しの姿勢で死んでいる(?)蟹の写真。岩の写真。岩を撮る三野さんの写真をいろんな角度から撮った写真。ヤドカリの写真。ヤドカリを手に乗せている写真。看板の写真。看板の文字を読む。《ハビャーン 琉球開闢の祖アマミキヨが降誕、あるいは上陸した聖地とされる。漁労の神役であるソールイガナシの神は、ハビャーンの森にいるタティマンヌワカダラーだといわれ、二頭の白馬として語られることが多い。》《ビロウの社 カベールの林の中には、ビロウ・クロツグやアダンなどの植物が生い茂り、様々な動物たちの住みかにもなっています》《久高島フボー(クボー)御嶽 久高島の中央西側にあり、琉球開びゃく神話にも登場する七御嶽のひとつです。昔から霊威(セジ)高い御嶽として、琉球王府からも大切にされてきました》《ご協力ください 久高島フボー御嶽は、神代の昔から琉球王府と久高島の人々が大事に守ってきた聖域です。神々への感謝の心と人々の安寧を願う場所であるため、何人(ルビ:なんぴと)たりとも出入りを禁じます。》枯れて色の抜けたクバが道の奥でうなだれている写真。ヤドカリの写真。ハイビスカスの写真。重なり合う木の葉の写真。撮った写真を見ている三野さんの写真。自転車に乗る三野さんとhさんの写真。蜘蛛の巣の写真。蜘蛛の巣に触れる手の写真。牛の写真。
    《外間(ルビ:ふかま)・ウプグイ
    正月をはじめ主要な年中行事における祭場である。
    一九六〇年代のある時期までは〈外間〉という家とその前庭部分(タムトゥ座)で構成される祭場であった。外間根神(ルビ:ふかまにーがん)や外間根人(ルビ:ふかまにーっちゅ)という神役が出るべき家系とされ、外間家の一番座(ルビ:いちばんざ)の祭壇で祀られていた香炉(ルビ:こうろ)が村落祭祀の対象となっていた。一九六〇年代に、一番座の祭壇は外間家とは別棟の拝殿(ルビ:はいでん)(現在の建物)として祀られる形に変化した。建物の中央部には、首里城正殿二階の空間の大庫理(ウフグイ)・斉場御嶽の祭場の大庫理(ウフグーイ)と同名の「ウプグイ(大庫理)」がある。
    また、向かって左側の建物(アサギ)は王家との関係を示す言い伝えが残されている。『遺老説伝』(ルビ:いろうせつでん)(十八世紀初頭に編纂)には、村落の始祖であるシラタルー夫妻の二女が王の妻となり懐妊するが、放屁したことをあざ笑われて島に戻り、ここで金松兼を出産したという話が収められている。金松兼(ルビ:かにまちがに)は、イシキ浜で得た「黄金の瓜子(ルビ:うりざね)」を持って首里に行き、王の世子として認められたという。》
    石垣の写真。屋根の上のシーサーの写真。地面に落ちてねじれたガムテープの上に、たくさんの蟻が貼りついている写真。畑で燃えている火の写真。堤防の写真。《港内徐行》海辺の写真。フェリーに乗っている写真。洞窟? の写真。森の写真。《聖地 世界遺産 斎場御嶽 入口》《知念岬記念公園入口》雲の写真。石塔の写真。《農産物直売店》食堂の写真。電話をしながら横断歩道を渡る人の写真。モスバーガーの看板の写真。スマートフォンを操作している三野さんの写真。空港の写真。飛行機の写真。機内の写真。飛行機から見た夜景の写真。
    工事現場の前で警備員が列を組んでフェンス前に並んでいるのを背にして、椅子に座りながらプラカードを持っている人たちの写真。手前にはおそらく機動隊員。旗や看板の写真。一部の文字はフレームに収まらずに途切れていたり、斜めに傾いていたりしていて読めない。画質のため小さい文字がほとんど読めない。拡大してかろうじて読める文字もあるが、推測の域を出ない。《CAMP SCHWAB》《辺野古新基地NO》《〔反射のため、読めない〕青い海》《美ら海を 基地に〔機動隊員の背中で遮られ、読めない〕たま〔同上〕(別角度からの写真では「し」を確認。「美ら海を 基地にしてたまるか」、か)》《新基地 ●●(「民意」、か)はNO》
    ジープがこちらに向かって走ってくる写真。《いきもの おびやかす 基地は いらない 工事を止メェて 早くやメェ》《●●●●●(「沖縄県民よ」、か) 今こそたちあがろう》《ヘリ基地反対協》《予算をコロナ対策へ! 違法工事を中●●(「止!」、か)》《辺野古新基地建設反対 普天間基地の固定化を許すな!》《テント 等設置 禁止》《これまで再三にわたる指導にもかかわらず、依然として違法状態が解消されていないため、これらの物件を、直ちに撤去し、道路を現状に回復してください。》《張り紙、看板等の設置を禁じます。》《前方歩行者通行あり》《ここは、歩行者道路です。立ち止まらず速やかに 通行して下さい。》《取付物等があった場合は、 沖縄防衛局が撤去・保管します》《物を取り付けたりしないで下さい》《辺野古新基地建設NO! 違法工事はただちに中止せよ》《〔フレーム外のため、読めない〕海を守る〔同上〕への責任(冒頭は不明だが「海を守るのは 未来への責任」、か) 辺野古新基地NO!》《US MARINE CORPS FACILITY 米国海兵隊施設 BEYOND THIS YELLOW LINE IS US FACILITY AND AREA UNAUTHORIZED ENTRY IS PROHIBITED AND PUNISHABLE BY JAPANESE LAW この黄線の内側からは提供施設内です。 許可なく立ち入った者は日本国の法令により処罰される。》稲? ススキ? の穂の写真。花壇の写真。《手を触れないでください。お花を大切に!》
    バラックのようなものが並んでいる写真。びっしりと並ぶ警備員の写真。《完成不可能な〔旗がねじれていて、以下読めない〕》《沖退教〔車両に遮られ、以下読めない〕》《島ぐるみ会議宜野〔同上〕》《新基地断念まで 座り込み抗議 不屈 2308日》《民意無〔別看板に遮られ、読めない〕やめろ!》《WARNING UNITED STATES AREA(FACILITY) UNITED STATES FORCES, JAPAN UNAUTHORIZED ENTRY PROHIBITED AND PUNISHABLE BY JAPANESE LAW 警告 米国区域(施設)・在日米軍 許可無き立ち入り禁止 違反者は日本国法律により罰せられる》《WELCOME 辺野古社交街》
    市街地の写真。黒いビニール袋でつくられた土嚢の並んでいる写真。古いオートバイの写真。《ホステス採用 泡〔フレーム外のため、以下読めない〕》と書かれた看板の横で、まぶしそうな顔をするhさんの写真。《●●●●(塗装が退色していて、読めない。「CLUB」、か)CHAMPION》《NEW OKINAWA》《スナック ハワイ》《辺野古コミュニティーセンター》アメリカの国旗が描かれた廃墟? の横を歩くなまけの写真。赤く縁どられた葉っぱの写真。《(アナガー)マツンギャミヤーガー》《デンデン墓》砂浜の写真。ハマヒルガオ? の写真。フェンスの写真。《警告 このフェンス等に以下の行為を行うことは禁止されており、日本国の法令による処罰の対象となりうる。 ー物を取り付けたり貼り付ける行為 ー汚す行為、破損する行為、取り除く行為 違反行為は日本国警察に通報する》フェンス越しに向こう側の写真を撮ろうとするhさんの写真。集まった(集められた?)貝殻の写真。それを撮ろうとするカメラの写真。《ミーバカ》《駐車禁止 関係者以外車両進入禁止》《新基地建設阻止! 闘争開始より8年(2639日)の命を守る会の闘い と テント村 座り込み 6039日》《コロナウイルス感染拡大防止のため平日午前中のみ監視行動をしています》《勝つ方法は あきらめないこと》《民意は新基地建設NO》広々とした東屋? の真ん中に、事務椅子が二つ並んでいる写真。《戦死者御芳名〔以下、列挙される人名は読めない〕》《平和之塔》街並みを背景に、高台から写真を撮っている三野さんの写真。再建途中の首里城の写真。瓦礫の写真。《首里城正殿は、国王が様々な祭祀や政治を行った場で、古い記憶などによると創建から沖縄戦までに4回消失したとされています。》役人装束を着たフェイスシールドの男が御開門(うけーじょー )の儀式をしている写真。ライブ中継のスクリーンショット。《あとから来る君たちへ》《― 平和宣言 ― 時代の変化を見極める英知 この国の誇りを守りぬく勇気 そして青年として諦めない情熱 我々は理想とする真の日本建国に向けて 永遠に平和を創造し続けることを誓う》波上宮の写真。明治天皇像の台座の写真。フェリー? に乗っている写真。石垣の写真。緑色・ピンク色の砂粒の写真。蜘蛛と蝶の写真。自転車に乗る三野さんの写真。最初に見ていた写真へとつながっている気配を感じる。
    空港の写真(沖縄に到着?)。自動車の写真。この自動車がくり返し出てくるので、三野さんが借りたレンタカーだとおもわれる。人気のない売店の写真。アーチ状のモニュメントの写真。《全学徒隊の碑》白い塔の写真。《旧ソ連ハバロフスク 2565.02Km ↑》砂浜の写真。《平和の礎(ルビ:いしじ)〔下部に記述が確認されるが、小さすぎるため読めない〕》人名が羅列された石碑の写真。ムカデの写真。ガジュマルの写真。二年前に撮影された(作者)の写真のスクリーンショット。宿の写真。スーパーで買ったらしい総菜の写真。惣菜を囲んでみんなで部屋の床? に座っている写真。オリオンビールの写真。夜の写真。夜の駐車場にいる猫の写真。クバを背景に妙なポーズ(クバを真似ている?)を取っているなまけとhさんの写真。石碑と折り鶴の写真(石碑の文字は読めない。「嘉數の塔」、か)。《トーチカ トーチカとは、ロシア語で「点」や「拠点」を意味する軍事用語で、防御(ルビ:ぼうぎょ)の中心となる陣地(ルビ:じんち)のことです。》《奉献》《再び戦争の悲しみが繰りかえされることのないようまた併せて沖縄と京都とを結ぶ文化と友好の絆がますますかためられるようこの塔に切なる願いをよせるものである》《青丘之塔》《●●●● ●●●●●●●(フラッシュを受けて、読めない。「観光名所 宜野湾嘉数高台」、か)》地球儀の皮をところどころ剥いたような建物の写真。《宜野湾市住居表示案内図》《米海兵隊基地 普天間飛行場》夜景の写真。朝の写真。《●(「事」、か)故 多発 前の車 確認》《●●(「西普」、か)天間 ●(「住」、か)宅地●(「土」、か)地区画整理事●(「業」、か) ●●●(車両に遮られ、読めない。別角度から撮られた写真で確認、「施行者」、か):●(別角度から撮られた写真で確認、「宜」、か)野湾市》切り崩された丘の写真。朝日に輝く雲の写真。《沖縄リージョンクラブ レストラン》日本とアメリカの国旗が丘の上に掲揚されている写真。
    シチメンチョウ? の写真。《久志大川田市場》《久志岳ゴルフガーデン》《NO! ENTRY》《NO NEW BASE》戦隊ヒーローを模した写真。《●(支持体が損壊していて、読めない。「私」、か)達は古里を守り、子供達を守る 夢は必ず叶う 命ど宝 辺野古大浦湾を守り抜く》《辺●(「野」、か)古新基地建設を中止し、 予●(「算」、か)を新型コロナ対策に回せ! 希●(「望」、か)の海、大浦湾に杭は打たせない!》ピンク色に塗られた柱が目立つ、野球場のベンチのような写真(キャンプ・シュワブ近く? のバラック? の写真とおもわれる)。《普天間5年以内 運用停止嘘 日目》座り込みをする人たちが機動隊員と警備員に囲まれている写真。タンクローリーが並んでいる写真。警備員に向かって指をさしている人の写真。覆面姿でビデオカメラをかまえる機動隊員の写真。
    以下、hさん撮影。港の写真。《AMERICAN VILLAGE》《RAT TRAP🐁 DO NOT TOUCH さわるな》《FORCE SUPPORT SQUADRON》《Please Scan Your ID for COVID-19 CONTACT TRACING》謎の絵の写真。資料館の展示? の写真。《15世紀頃 越来グスクの時代を巡る》瀬戸物屋の写真。《セトモノ店》資料館の展示? の写真。《黒人〔草に遮られ、読めない〕して〔同上〕は〔同上〕栄》シャッターが下りた店の写真。《部屋貸 福祉課 1日¥1,000より》《お願い この看板を動かしたら 元の位置に戻して下さい》アーケード街の写真。《〔青いビニールテープが貼られていて、読めない。「AMERICAN PIZZAMAN」、か〕》ボールプール用のボールのようなものがビニール袋に入れられて捨てられている写真。《Can’t Park here. a fine $50 or ¥5000》なまけが木々の奥からこちらに向かってくる写真。《第一外科壕跡》《母校にゆかりのあ●(「る」、か)相愛樹●(「を」、か) 思い出の樹としてこの地に植えまし●(「た」、か)》座り込み用の椅子が畳まれて置かれている写真。《ご協力を! イスは各自で お願いします》カバンに収納されたプラカードの写真。警備員が並んでいる写真。《CAMP SCHWAB》《ホステス採用 泡盛》廃墟? の写真。荒らされた室内の写真。フェンスにかけられた網の写真。《NO NEW BASE》妙なポーズを取るなまけを撮る三野さんの写真。木を背景にしたhさんの写真。蝶の写真。
    《大里家(ルビ:うぷらとぅ)
    久高島の旧家の一つで、母屋の東側に位置する神屋が拝みの対象となっている。大里家にまつわる言い伝えが二つある。
    ●イシキ浜に流れ着いた五穀の種子の入った壺を拾い上げた人物については様々な説があるが、その一つに、大里家の始祖であるアカッツミー夫婦がいる。大里家は「五穀世ウプラトゥ」とも呼ばれ、アカッツミーは五穀豊穣の神として祀られている。
    ●大里家の娘であったクンチャサヌルが、第一尚氏最後の王の尚徳王が久高島にやってきた時に恋仲になった、という言い伝えがある。それによれば、尚徳王が久高島滞在中に首里でクーデターが発生し、急きょ首里に向かったものの、時すでに遅しと悟って途中の海に身を投じた。大里家には戦前まで「尚徳王の簪(ルビ:かんざし)があったと伝えられている。》
    《御殿庭(ルビ:うどぅんみゃー)十二年ごとの午年に行われてきたイザイホーや、村落の主要な年中祭祀の祭場である。広場の一角には、中央に神(ルビ:●●(小さすぎるため、読めない。「はん」、か))アシャギが建ち、神アシャギに向かって右側には村落の始祖の一人とされる百名シラタルーを祀った神屋(シラタルー拝殿)、左側には捕獲したエラブウナギ(イラブー)を燻製にする焙乾屋(ルビ:ばいかんやー)がある。
    イザイホーとは、久高島で生まれた三十歳(丑(ルビ:うし)年)から四十一歳(寅年)までの女性が、祖先のセジ(霊力)を受け、島の祭祀集団に入る儀式である。イザイホーの時には、神アシャギはビロウ(クバ)で壁が作られ、入口には現世と来世をつなぐ象徴とされる“七つ橋”がかけられ、神アシャギ後方のイザイ山には女性たちが三晩籠(ルビ:こも)る“七つ屋”が建てられた。》
    自転車に乗る三野さんと山本の写真。シーサーの写真。《えいこはなばたけ》岩に開いた穴の写真。年輪のような模様が浮かぶ岩の写真。錆びた櫛の写真。岩の上に乗っている白い粉の写真。クバを撮る三野さんの写真。石造りの祭壇? の写真。ガジュマル? の写真。《斎場御嶽への参道》
    山本、hさん撮影のフィルム写真が60枚ほど共有されるが、力尽きる。なまけと三野さんの写真は共有待ち(?)。「日記」制作の合間に「三野新・いぬのせなか座 写真/演劇プロジェクト」の座談会の文字起こし修正。修正完了分を笠井さんが公開する。今月末に発表予定の原稿の確認。夕食。年明け締め切りの原稿用に取り寄せた資料を読む。

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