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おもいつきの声と色

#3 月への旅

企画制作:小島聖、平松麻
動画撮影/編集:西塁

物語が生まれる時

平松:フランスのレコードレーベル「SARAVAH」を辿る展覧会のセノグラフィーの仕事をしていた時のこと。印象的な歌詞や、ミュージシャンのとんがった言葉に刺激を受ける日々、「月」に関する一文に出会いました。邦訳はたしか「月をとってきてよ」。女が男に、実現不可能なことをお願いすることで愛を図る表現だったと記憶しています。その記憶から、今回の「月への旅」が生まれたんです。
フランス詩が好きなのですが、私の場合、物語の種は詩情に埋まっていることが多いです。詩を綴ることばのあわいに漂う気配をキャッチして、それが表現の糧になることがあり、紙芝居も然りです。

小島:「月をとってきてよ」という言葉を聞いて、一番最初に浮かんだのは、『パパ、お月さまとって!』というエリック・カールの絵本です。女の子がお父さんにお月様と遊びたいとお願いをして取りに行く物語。
月って魅力ある対象だと思います。夜空を見上げて月が出ていると優しい気持ちになるような、時に不思議なエネルギーに支配されて能動的になったり官能的な気持ちになったり。空想が苦手で結構現実的なので、私が文章や物語を書きたいと思う時って、私が五感で体験したことからしか生まれてこないのです。紙芝居を作るようになった日々の中で、子供の発した言葉や一緒に旅したこと、絵本や本など、特別なことをしなくても気に留めだすとそこ此処に種はあるのだなと。

撮影:西塁

平松:聖さんも私も旅を必要とする方だと思いますけれど、旅は物語をいっぱい孕んでいますね。でもきっと、遠くに行かずとも物語の種は足元にたーくさん転がっているはず。その種に水やりをしたら、足下でも手元でもどこからでも芽がでてきて、旅を始められるんじゃないかと。種を見つけたら、芽がでるまで、そのひとつめがけてじっくり水をやってみるのが好きです。ずっと水をやり続けていたら、そのうち見たこともない花の色や形に突然出会えるかもしれないし。自分が先導した気になって開花させるより、種も花も旅も物語も、それ自身が行きたい方っていうのがあって、それにじっくりついて行くと、期待ハズレも予想外もあって面白いんですよね。

小島:とはいえやはり旅には行きたいものですね
かっこつけると日常でもたくさん旅はできるけど、物理的な旅にそろそろ気持ちよく出たいものです。
知り合った頃、突発的に奄美大島に旅に出ましたね。麻ちゃんがスケッチブック片手に、サラサラとデッサンしていた姿が印象的でした。

撮影:西塁

平松:聖さんと奄美大島で待ち合わせて、目的なく景色を過ごして、そのあと私は1週間かけてバスを乗り継ぎながら点在する教会をひたすら描きに出かけたのでした。そのとき、旅の供に持っていたフランス詩を「朗読してください」って、奄美大島の浜辺で聖さんにお願いしたのを覚えていますか? 砂つぶのザラザラと、ビュービューの強い風と、そばに聴こえた声。旅に物語がペタリとくっついたようなちょっとしたひとときでした。

小島:もちろん覚えていますよ。
スムーズに読めなかった記憶があります。まだ知り合った頃だったし、気恥ずかしさもあった気がする。
麻ちゃんの佇まいって芯がしっかりある印象です。麻ちゃんから生まれる絵や物語にもピリッとしたエッセンスがあって好き。
奄美の海辺のお話、今度作りましょうか!

平松:浜辺で詩を読むひとの物語とか、月を取ってきて海に浮かべる物語とか、奄美の海辺でつかまえた光と影の境目の物語とか。
紙芝居のワークショップやイベントで、出会ったひとたちの言葉を少しずつ入れ込んで組み合わせたら、どんな物語が生まれるでしょうか。その時は、絵と声で物語を膨らませられたらいいなって思います。油絵はずーっとひとりきりで仕上げるので、時に「皆で」というのも、私にとって旅になる気がします。

撮影:西塁

「おもいつきの声と色」イベント開催

長野県松本市にある「10cm」にて、小島さんと平松さんによるワークショップが開催されます。
絵を描き、物語を読み、一緒に紙芝居をおもいつくまま自由につくりませんか?
描いていただいた絵をご自宅で飾れるように、木工デザイナー・三谷龍二さんが木製スタンドをつくってくださいます。
なお、開催に際しては感染症対策を徹底した上で行います。ご協力をよろしくお願いいたします。

日時/2021年3月13日(土)、3月14日(日)
場所/10cm (長野県松本市大手2丁目4-37)
参加方法/要予約(2月14日受付開始予定)
詳細を確認の上、お申込は10cmのHPより直接お申込みください。
※詳細は決まり次第、10cmHPもしくはインスタグラムにてお知らせします。
主催/10cm

※本イベントは、SPINNERならびにスパイラル/株式会社ワコールアートセンターが実施するものではございません。実施の詳細については、主催者へ直接お問い合わせください。

PROFILE

  • 女優
    小島聖

    1976年生まれ、東京都出身。1989年、NHK大河ドラマ『春日局』で女優デビュー。その後、ドラマや映画、CMなど様々な分野で活躍。柔らかな雰囲気と存在感には定評があり、映像作品はもとより話題の演出家の舞台にも多数出演。また30代で出会った山の魅力に魅せられ、プライベートでは国内外の様々な山を登るなどアウトドアに関するライフスタイルでも注目され、2018年には自身初のエッセイとなる「野生のベリージャム(青幻舎)」を刊行。

  • 画家
    平松麻

    1982年生まれ、東京都出身。油彩画を主として展覧会での作品発表を軸に活動する。自身の体内に実在する景色を絵画にし、「雲」をモチーフに据えた心象風景を描く。2020年6月~2021年末まで、朝日新聞夕刊連載小説、柴田元幸新訳「ガリバー旅行記」の挿絵を担当中。森岡督行・書籍(『本と店主』誠文堂新光社/15年)、村上春樹・アンデルセン文学賞受賞の講演テキスト(『MONKEY vol.11』SWITCH PUBLISHING/17年)、穂村弘・書籍(『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』河出書房新社/17年)、三品輝起・書籍(『雑貨の終わり』新潮社/20年)など挿画も手掛ける。マッチ箱に絵を描くシリーズ「Things Once Mine かつてここにいたもの」も発表中。

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