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おもいつきの声と色

#2 森の独り言

企画制作:小島聖、平松麻
動画撮影/編集:黄瀬麻以

「声」をテーマに。

平松:聖さんに初めてお会いしたのは舞台作品「この熱き私の激情」を観に行ったときでした。舞台で聴いていた聖さんの声は、澄んだ軽やかさもありつつ、底深く。強かったです。それから少し経って、一緒にピクニックしましたよね。今度は春の芝生の上で声を聴いていたら、風ときもちよく重なる声だなあと思いました。体内の深いところから丁寧に響いてくるようで、まさに声の「音」でした。自分の声どういうふうに聴こえているんですか?

小島:どう聴こえてるのかな?
声を発している私が私の耳から入ってくる音と、相手が受け取っている音って違うと聞いたことがあるの。
だからどんな印象なのか自分でもわからない。映像から聞こえてくる音も多分自分が聞いている声と少し違う気がしています。
「あつもの」という映画に関わった時に、監督から、もっと低い声を聞きたいと言われて。声の技術を持ち合わせていなかったからどうしたらいいかが分からなくて。その後、求められた時に対応できる身体でありたい、と思って発声を習い始めました。
自分の声、好きです。普段はそんなに意識していないけれど深いところから声を出すことは訓練で染み付いているのかもしれません。呼吸を深くする方が身体の巡りにもよい気がしています。
私は麻ちゃんの声も好き。麻ちゃんは自分の声、好きですか?

平松:自分で描いた紙芝居を読んだとき、自分の声を信頼できたんです。好きか嫌いか考えたこともないけれど、声があってありがとう、とだけ思いました。喉も耳も唇も一緒になって動いてる、と当たり前のことを感じました。ある意識をもって声を出せば、身体と絡み合って心体の螺旋が始まるんですね。
今回の「森の独り言」では、はじめのほうの「ちょっと待って」という声音にドキンとしました。声が絵の手を急にグイッと引っ張るから、静かで広大な森に連れ行かれた気分に。

撮影:黄瀬麻以

小島:感情で声に表情が生まれますよね。麻ちゃんの絵が私にそんな表情の声を出させたのだと思います。
今回は麻ちゃんのマッチ箱のたくさんの作品があって、その中から私が直感で選び、いろいろ組み合わせながら物語を紡いでみました。私から出てきた物語だから余計に声がしっくりくるのかもしれません。恥ずかしくもあるけれど。
麻ちゃんが自身の紙芝居を読んでいる映像を観た時、とても素敵でした。きっと自分の世界観がしっかりあるんですよね。声や音から想像して絵がうまれることありますか? もしくは絵から想像する声や音はありますか?

平松:声や音から絵が生まれることはそんなになくて。だから、紙芝居というかたちで、声を頼りに描いてみるのは新鮮な可能性そのものです。
自分の描く油絵から想像する音は、たとえば山頂の無音のなか聴こえる風の音…だったらいいな。そんなふうに思うから、風と合わさる聖さんの声に、あっ!と意識が向いたんだって思います。

撮影:黄瀬麻以

小島:声というテーマからは離れるけれど、麻ちゃんのマッチ箱に絵を描くことはどんなきっかけから生まれたのですか?
紙芝居はなんでも紙芝居になりうるから楽しいのだけれど、きっと一般的には、これ紙芝居?と思う人もいるかなって。声ではないけどマッチ箱の崩れる音はとてもいい効果音だなと思います。

平松:(マッチ箱に描くきっかけは)掌で触れたり持ち運べる絵があったら、と思ったからです。昭和の純喫茶とか酒場のマッチの絵も大好きだったし、絵で火をおこすヒリヒリした感覚も好きです。マッチ箱はモノ感がしっかりあるから、立てたり、ひっくり返したり、重ねたり、物語を生むキッカケをたくさん孕んでいるのがおもしろいんです。
紙芝居という定番型の力強さもあるけれど、新しい景色もつかんでいきたい。みんなで集まるのをしばし我慢しなきゃならない今、紙芝居の多様なかたちにワクワクしてみたいです。

撮影:黄瀬麻以

PROFILE

  • 女優
    小島聖

    1976年生まれ、東京都出身。1989年、NHK大河ドラマ『春日局』で女優デビュー。その後、ドラマや映画、CMなど様々な分野で活躍。柔らかな雰囲気と存在感には定評があり、映像作品はもとより話題の演出家の舞台にも多数出演。また30代で出会った山の魅力に魅せられ、プライベートでは国内外の様々な山を登るなどアウトドアに関するライフスタイルでも注目され、2018年には自身初のエッセイとなる「野生のベリージャム(青幻舎)」を刊行。

  • 画家
    平松麻

    1982年生まれ、東京都出身。油彩画を主として展覧会での作品発表を軸に活動する。自身の体内に実在する景色を絵画にし、「雲」をモチーフに据えた心象風景を描く。2020年6月~2021年末まで、朝日新聞夕刊連載小説、柴田元幸新訳「ガリバー旅行記」の挿絵を担当中。森岡督行・書籍(『本と店主』誠文堂新光社/15年)、村上春樹・アンデルセン文学賞受賞の講演テキスト(『MONKEY vol.11』SWITCH PUBLISHING/17年)、穂村弘・書籍(『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』河出書房新社/17年)、三品輝起・書籍(『雑貨の終わり』新潮社/20年)など挿画も手掛ける。マッチ箱に絵を描くシリーズ「Things Once Mine かつてここにいたもの」も発表中。

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