愛とお金とタブーが好きなものですから・・・それらについての調査報告とかします。
愛、お金、タブーとくると、「死」という言葉が頭に浮かぶ。
「愛」に一字足して「性愛」。
「性」と「死」というタブーと向き合った過去はHIVウイルス出現の時代。
2020年は新型コロナウイルスの流行で「死」を直視していく時代かと思っていたら随分お金がクローズアップされている。
国会の予算審案についてタブロイド的お昼のニュースでも解説されたりして。
お金は酸素のように生活のいたる所に浸透していて、魚が水のことを考えないように、お金のシステムにどっぷり浸かった私はお金がなんなのか考えてこなかった。
お金は取り引き媒体だから相手がいないと成り立たない、という意味において、恋愛と似ている。
愛し合っている相手でもお互いを自分の「所有物」とは言えないように、
「自分のお金」と思っても、靴やバッグやダイヤモンドを「私のなのよ」と言うのとはちょっと違う。そこも恋愛と似ている。
「自分の資産は他人の負債」
This note is legal tender for all debts public and private”
「この紙幣は公的および私的な負債の法定貨幣である」
米国ドルには書かれた言葉。
第三者への負債として生まれた貨幣。
両者の合意と信用によって生まれる資産と負債の関係はまるで結婚。
「夫妻」と「負債」……。響きも同じだし。
夫婦の関係のように信用と契約によって成り立つマネーシステムは、負債が全部支払われたらお金の「信用創造」の過程が逆行して世界からお金はなくなってしまうというシステムでもある。
愛も幻想か?
愛はもともと可視化が難しい、が、幻想じゃないということにして……
お金に関して言えば、
1944年、アメリカドルが、1オンスのゴールドに対して35ドルのレートで米ドルと交換するというブレトン・ウッズ協定で、米国ドルは世界の基軸通貨となった。当時のアメリカは最強だった。
第二次大戦中、レンドリース法によって、イギリスに軍事物資を提供した見返りに、西半球のほとんど全てのイギリスの海軍施設を譲り受け、ヨーロッパから北大西洋航路の主導権を握り、実質的に世界のほぼすべての海域の支配を得た格好になったアメリカは、そもそも、大西洋と太平洋に面した大陸の主であり、ヨーロッパと日本に同時に侵攻することができた国なのだ。
全世界で5000万人の命が失われた第二次大戦においてアメリカが失った兵士の数はおよそ50万人。大戦で細かく分断されたヨーロッパに対して、真珠湾を除いて、爆撃を受けなかったアメリカ。ゴールドの重さに保証された世界の基軸通貨を持つ国、アメリカはコロンブスの探検から、おーよそ500年後に、ヨーロッパから世界の覇権を奪いとった。
しかし、最強のアメリカもベトナム戦争の時のドルの流出は防ぎようがなかった。1971年、ニクソンはドルとゴールドの兌換を守ることをやめた。でも、だからこそ、グローバルな貨幣システムの米国ドルへの依存は強まった。
ニクソン、畏るべし。
約束を破っておきながら、世界の経済システムへの影響力を強めるとは。
ゴールドという錘をなくしたお金は一体どこへいってしまうのか。
最近、お金は紙幣という姿を捨てて幽霊みたい。電子マネーとなって、グローバル・カジノとなった外国為替市場やオンラインビジネスで取り引きされている。2019年のアマゾンの日本事業での売り上げは1兆7千億円以上。コロナ対策に日本が用意した予算とほぼ同じ? (間違っていたらすみません)その中から洗えるマスクが配られた。オーダーしていないモノが配達されるところがアマゾンとは違う。
性(愛)と死とお金・・・という3つのタブーとされてきたものが象徴するのは、カール・グスタフ・ユングの「元型論」でいうところのグレート・マザー。
生と死と富を司る豊饒の女神は世界中に多く存在する。
性と死とお金がタブーではなかった時代はそんな女神が崇められていた時代だ。
「濃厚接触」という四字熟語の響きにドキッとすることもなくなった。
新型コロナウイルスの世界的な流行で、世界中のお金の流れと人々の繋がり方にも変化が起きた。
インターネットで繋がれた世界へと大きく移行していく流れは代官山の小さなライブハウスでも生々しく感じる。
あ〜それは〜落語を通して・・・新しいパラダイムシフトを〜
日本の古典芸能を通して感じたんですわ。
落語のストリーミングライブを通して感じたんですわ。
あ〜落語、それは、たった1人で、誰もいない空間にバーチャルに? リアルな世界を紡ぐという日本の古典芸能。まるで、今の、対人距離をとって暮らすことを余儀なくされたコロナの時代を象徴するような独りぼっちの芸です。
落語ファンは、スマートフォンやインターネットが苦手という年齢層が上の方が多いわけで、いつもであれば、電話での予約が1番多く、人気の落語家さんが出演の場合にはものすごい数の電話をさばいていくことになるわけです。
2019年8月、今から一年もたっていない夏、人気の落語家さん出演の折に、電話の対応が大変になることを予想して、インターネットの予約のみ!・・・と発表した時の、異様な事態に驚きました。 日本人の識字率が低いんじゃないかと疑い念をもちました。
「ご予約はメールかインターネットのみ」
って書いたのに、赤くしたし、太くしたし・・・でしたのに・・・
予約の電話が、がんがん鳴り、とうとう、店の前にテーブルを出して、ほぼ絶対にやらない、古典的に、紙チケットの手売りまでやりました。
ところが、2020年5月、
つい先週、人気の落語家さんの急遽決まった独演会の配信ライブ。
ライブハウスは休業要請により、休業ですから、事務所には電話をとるスタッフはゼロ。
インターネットの販売サイトでチケットで予約をとっていただくしかない。
落語を見ていただくためには、・・・グーグルのアカウントをとったり、インターネットのチケット・ヴェンダーへ会員登録もしていただかないといけない。
ところが・・・2019年8月のクレームの嵐がウソのよう・・に・・・
2020年5月、クレーム、ゼロにて、・・・メールでの問い合わせもなく、
4日間でインターネットのチケット販売サイトで1000枚近いチケットが売れました。
(ご出演された落語家の師匠の人気からしたら4日で1000枚は少ないです)
もっと言わせていただけば、2019年8月には全く効き目がなかったTwitterでのプロモーションも効きました。4日で1000枚ですから。
在宅でプロモーションですから。
落語家の師匠の人気が、なんといっても大きいですけども・・・。
本番、当日、落語が始まって、
クレームがゼロだった理由がわかる瞬間が訪れます。
パラダイムシフトを目撃した瞬間です。
無観客ライブの、古典芸能・落語会でパラダイムシフト体験です。
配信と音響のスタッフと私と、落語家の師匠、この4人だけの、落語会にしては暗すぎの会場で、パラダイムシフトの目撃まで、3分前。
ミラーボールと、サンプラーで90年代エレクトロニカ風にアレンジした出囃子で、師匠のご登場です。
お名前ださない方がいいかと思いますので、ふせておきますけど柳家喬太郎師匠と私どもと、スタッフあわせて4名だけの暗くてキラキラの世界でした。
本番が始まると、喬太郎師匠が落語をおやりになるYouTube の画面横のチャットに、
「初めてのスマホ体験、配信観られて幸せです」とか、
「888」とか、なんだか馴れたチャットが流れていく中、
クレームがゼロの理由が浮かびあがりました。
お客様たちは、わからないことや不安に感じたことなんかを、配信中のYouTubeのチャットやSNSで情報共有して、お客様どうしで助け合って問題解決してくださっていたのでした。
CHAORD:CHAOS(混乱)とORDER(秩序)をミックスした造語。
ヴィザ・クレジットカードの創設者のディー・ホックつくった言葉です。彼がこの言葉で表現したのは、
「魚や森林のような、トップダウンではない、組織の中を流れる意思決定ネットワーク」が、代官山の暗闇に浮かび上がって、文字通り、配信中の、Macの画面の上を流れていきました。
「参加者が自分たちでまとまる未来の組織」
・・・これは誰かが言っていた言葉だけど出典を忘れてしまった!
未来の組織が現実に「今の組織」として画面の上に光となって浮き上がっていました。
情報を集めて、決断を専門家に任せるという古典的な「命令」というトップダウンのオーガナイズ・システムは、すでに崩壊してしまっていたのでした。
「決断を専門家に任せる」ことができるのは、環境が予測可能であるという前提がないと成り立ちませんから。
配信イベントの主催者で企画者である“晴れ豆”は、配信ライブの、
チケットの適正価格も、販売方法も、配信方法も、配信イベントの「正義」もわかりません、しかも、お店も閉店の危機にあったりして・・・ははは(汗)
Richard Pascale じゃないけれど、「カオスの縁をサーフィン」しています。
事態はすでに予測不可能。
だから私もだんだんなにを書こうと思っていたのかわからなくなってきました。
ノーベル賞を受賞した物理学者のIlya Prigogineは“Near Chaos”の期間は次の複雑性への移行期だと言っています。
新しい物語が始まる。
性と、死と、そしてお金。
葬られた女神の物語と一緒に、愛や死の隠された秘密とともにお金のミステリーもだんだんと解き明かされてくる、そんな気がするのです。
というか紐解いちゃうぞっと。


代官山 晴れたら空に豆まいて
東横線 代官山駅から徒歩2分。小さいですが音は世界で1番いい会場の1つです。そんなこともあり、小さい晴れ豆に、マジか?!と驚きの素晴らしい方々が出演してくださってます。2020年3月から「アレ」の影響で休業、無観客Live配信始めました。TOKYO HARE MAME TVよろしくです。
PROFILE
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- 作家・プロデューサー
- 桃江メロン
代官山のイベントスペース「晴れたら空に豆まいて」のプロデューサー。
早稲田大学卒業後渡米。アメリカのニューヨークのコロンビア大学・大学院・映画学科で修士号取得。コロンビア大学在学中に監督・脚本した短編映画がアメリカとかの映画祭でいくつかの賞をとったりノミネートされたりアメリカとかヨーロッパのどこかで上映されたり。。。帰国後に書いた小説「表参道EXIT A4」がランダムハウス講談社の新人賞受賞。
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