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連載:自由という名の映画館で

2020.10.18

ブリコラージュ〜高校生映画企画部〜


大分県日田市で独立映画館リベルテを運営する原茂樹さん。リベルテの磁力で集まる人々のお話しや、プロジェクトのお話など。

コロナで大変な状況なのは、ぼくらのような映画館だけじゃないことは百も承知。むしろ全ての人が当事者。でも、そこで”全ての人”と分かったふりをする自分の考え方をどうしても好きになれない。そんな日々が続いた。人と会えなくなって、果たしてみんなはそれぞれどう過ごしているのだろう。でも、人と会わないからそれぞれの情報が入らない。もどかしい日々。季節はいつも通りに過ぎてゆく。

9月に入って、ようやく少しずつ客足が戻ってきた。ここぞとばかりに、できる限りお客さんに現状を聞いてみた。少なからずコロナの影響はでているが、大丈夫な方も多く、安易に安心していた。すると、今年、都市部の大学に合格したけれど、校舎にもまだ行ってない新入生がいた。そうだ、こどもたちと会えてなかった!そう感じた。いかんいかん。余裕がなくなってくると、自然と視界が狭くなるっていつも映画が教えてくれるのに。実際に会わないけれど、いつも今でもいろんな人が生きているのだ。想像力よ、もっと優しい方に向かってゆけ。

意識的に彼ら若者との時間を多く取るようになった。といっても、むだ話をする友人になっただけなのだけど、だからこそ、少しだけ本音も聞けるようになった。そうすると、こちらが心を開いたからか、地元の高校生や他の地域の大学生も増えてきた。不思議なものだ。場所も心と同じなのかもしれない。

これまでやってきた通りに、一人一人に向き合ってみたら、大人と話す恥ずかしさはあれど、それぞれ持っている想いが、少しずつ顔を出してきた。大人とかこどもとか関係なく、みんな同じだと分かる瞬間だ。非常に嬉しい。その中に、映画が好きな女子高生がいて、とても興味深かった。最初は、駅前のイベントで映画上映したいと先生と一緒に来た中のひとりだった。なぜ映画を上映したいのかとか、映画を上映する為の流れとか、地元にあるものを利用しようとか、、、話していたら、その子から、ほんとは観たい映画があって、『mid 90’s』や『ミッドサマー』なんです!と言われびっくりした。”それは、他の友達は分かる?”と聞くと、”いえ。よく分からないみたいです”と。でも、A24(という映画製作会社)は今の映画界では彗星の如く現れたある種の希望みたいなものだし、ぼくも変わったものを見る目で見られて育って来たし、この子に自分を投影したのかもしれないけれど、単純に”それでいい!そのまま大人になって欲しい”と思い、そんなに映画好きなら、ぼくと一緒に作品を選んで、月に1回くらい上映会をやってみる?と提案してみた。あくまでも主導はその子。決めるのも、その子。それにぼくは従うだけ。ひとつ返事で”はい!やります!”と、気持ちの良い返事が帰ってきた。大林監督、ここにも新しい兆しがあります。

さて、呼びかけたはいいもののどうしよう。今あるものを活かし、できる限り永遠に自発的に続けられ、それぞれの個性も大切にし、映画館で映画を観ることの素晴らしさを感じてもらえるには、、、。そういえばつい先日、『いただきます〜ここは発酵の楽園〜』という映画のトークショーを行なったばかりで、ゲストの発酵デザイナー:小倉ヒラク氏と”ブリコラージュ”について話したことが印象的だったので、彼らに話してみた。

元々は、フランスの文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースが、人類が古くから持っていた知のあり方としてそう名づけたのだが、今でも使われている普遍的な知恵やものづくりと同様に、(ないものを求めて外から持ってくるよりも)ここにあるもの・できることから価値を見出してゆこうということだと話してみたら、すぐに共感してくれて、そのコンセプトをそのまま会の名前にしようということになった。フランス語で字面もカッコいいのも決めてだろう。

そして、その子は高校を卒業したらデザインの方に進むらしいので、実際に社会で活動していこう!と、毎回チラシを作成することにした。果たしてどんなデザインなのかと思ったけれど、とても素敵で驚いた。

上映会の時間も放課後。彼らだけの為に映画館を解放することを決め、集客も不特定多数を一気に呼ぶスタイルではなく、一人一人に参加を地道に呼びかけることにした。もちろんノルマなどはない。観て欲しい!という気持ちだけが原動力で、映画館はたとえ会長ひとりでも上映するし、呼びかけも手伝うことにした。会則も簡単で、インスタグラムにアカウントを作って、会長は、そこでなぜこれを上映したいのかを書き、観た後の感想は参加者みんながそれぞれ行う約束にした。月に1度くらいは映画を観ようというこの行為が、どこまで根差すかは分からないけれど、この兆しは何よりも眩しく美しくぼくの目に映った。だからこそ、その光がもっと多くを照らすように、眩しい集まりになっていってもらえると嬉しいし、ぼくもメンバーとして未来そのものである彼らの想いにフォーカスしていければと思う。

みなさんもぜひ参加して彼らに会ってほしい。なにより、日田で始まったささやかな光に実際に触れてほしい。


日田シネマテーク・リベルテ
2009年、2回目の閉館を余儀なくされた故郷の映画館:日田シネマテーク・リベルテを引き継ぎ現在に至る。35mmフィルム映写技師でもある。スクリーン数はひとつ。座席は63席。館内でライブやトークイベントも行なっている。ロビーだったスペースを、ショップやギャラリースペース、サロンに改装。ここで出会った方々と一緒に人生を共にしているが、全ての中心は映画である。

PROFILE

  • 日田シネマテーク・リベルテ 代表
    原茂樹

    大分県日田市出身。映画館「日田シネマテーク・リベルテ」代表。35mmフィルム映写技師。人口10万人以下の町に再び映画館が戻って欲しい。様々な活動依頼があり、今ではヤブクグリ(林業支援団体)広報係、コラム連載などの執筆業、TV『キン様の鍵』(大分朝日放送)にて映画コーナーレギュラー出演、大学講師やアートディレクション、フィールドワークなど活動も様々。故郷である日田市の映画館が1日でも長く楽しく存続できることを願っている。

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