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連載:フィンランドの景色を通して

2020.11.30

第5回 暗い日々をどう過ごすか


はじめまして、フィンランドのヘルシンキに在住しています、星 利昌(ほしとしあき)です。
12年前の2008年、日本からフィンランドに渡り、今までやってきて気付いたこと、感じてきたこと、発見したこと、これからやっていきたいことなどをここに綴っていきたいと思います。このSPINNERを通して、フィンランドで生きる人間が何をどのように普段感じているか知ってもらいたいです。質問もしてください。

ヘルシンキ 11月 午後4時

フィンランドは秋が終わり、冬が始まろうとしている11月の今日この頃、16時には外が真っ暗になり朝は8時すぎまで暗いです。フィンランドの冬、僕は寒さより暗さに影響を受け、特に雪がない11月は街が灰色に見えてきます。雪が降った方が雪の白色に反射して辺りが明るくなるのです。日中、空が晴れているなら気分も楽ですが、曇り空が続くと閉鎖感が増し、どこか閉じ込められているような気にもなる時があります。数日なら耐えられる気もしますが、これが何週間か続くと、自分の気持ちも天候と全く同じような気分になってしまいます。

最初にフィンランドに来た時は、天候がこんなに気分を上下させているとは気付きませんでした。実際自分は天候に左右されるようなメンタルしか持ち合わせておらず、冬をフィンランドで過ごすのは13回目ですが、この気候に馴れるという感覚をなかなかつかめないままでいます。冬にはどこかで眠っているのだろうなという熊たちのことを想い、その冬眠というスキルを自分も得ることができたらなと、ふと羨んでしまう程、熊の冬眠という能力をリスペクトしています。

庭の芝生は太陽が当たっていないという理由だけで成長が止まってしまったり、枯れてしまったりします。これを見ていると人間も同じように太陽の光を浴びて、元気が出たり、細胞が生まれたり活性化したりしているような気がします。曇りの日が続くと身体が固まって動かなくなる感覚さえ覚えます。これは僕だけなのかもしれませんが。

暗くて寒い日はどうしても、外へ出かけたり、アウトドアがしにくくなる分、内にこもる時間が長くなります。夏の晴れ渡った空は開放感を感じ、何でも出来るような感覚になり、もの凄くポジティブになれる反面、冬は寒さよりも厳しい暗さに閉鎖感を感じ、ネガティブな感情になることも少なくありません。

このような自分の内面が天候によって左右されることは、必然というか、自然なことだということは、人と話すことによって気付きました。もう暗さは季節で必ず訪れるもので、当たり前だと思って、平然とこのエッセイを書かせてもらっています。

曇り空の下、太陽の光を浴びられずに過ごすと、3週間を越えたあたりからメンタルや身体の異変に気付くのですが、ここまでは不安要素ばかり書いてきたので、ここからは実際にどう過ごせばいいか自分なりの考えを書いていきます。

春、夏、秋と季節の移り変わりを感じてきたので、それらのインスピレーションを整理して、この冬の間に形に変える作業に転じれば良いと思っています。冬は内にこもる時間が多くなると書きましたが、自分の内面との対話の時間も自ずと増えるので、そういう時間を自然と持てるようになるのもこの季節の特徴なのかもしれません。このようなメリハリがあるおかげで、何が気分を良くさせて、何に気分が落ちるか、というのを冷静に考えられるようになりました。

そしてこの文章を書くという行為も冬のこの時期に、ものすごく良い影響を与えてくれているように感じます。文章を書く時には、想像力が掻き立てられますし、多くの時間を要したとしても、その時間はとても有意義で、普段の生活に同じような時間はないような気がします。

学校でいろいろなことを習って教わってきましたが、30歳を過ぎたあたりから、大人になってからどういう道のりを歩んでいけばいいか、びっくりするぐらい教えてくれる人がいないことに気付きました。コロナという恐らく世紀の歴史に残るような緊急事態の中で、より悩んだり迷ったりする人は増えていると思いますが、ここは目先の利益に囚われず、今までの激動の人生で忘れがちだったり見過ごしてきた物事を考えて、人格形成とは何なのかもう一度考える時間にすればいいのではないでしょうか。

夢や目標を実現するためには何が必要か?ということが今までいわれてきましたが、先が見えにくくなった今、自分の内面にも考えを向けて、自分に合った人格形成とは何か、考えたいところです。人格形成ができていれば何か成し遂げる時も成し遂げた後も、常に軸になってくれるからです。

歳をとっていくにつれて、まわりの状況や自分の感受性も変わっていきますが、それらを自分なりにでも良い変化と捉えられるように、忘れがちだった人格の形成というものをもう一度このフィンランドの暗闇の中で考えたいと思います。暗闇の中で。

冬のフィンランドもそれぞれの気温の中で、風景は変化し、美しい一面を発見することができます。冬の美しさもまた紹介させて下さい。

「ここに世界で最も機能的な街を作ります」

PROFILE

  • 陶芸家・料理家
    星利昌

    1985年生まれ、兵庫県出身。ヘルシンキ在住。
    神戸で日本料理の修行後、2008年フィンランド・ヘルシンキに移り、HotelKämp、Chez Dominique、Atelje Finneといった現地のレストランで料理の経験を積む。2011年からRavintola Hoshitoを開業し独立。2016年からもともと興味のあった陶器制作を始める。2018年自身のお店を一旦閉める。現在作品は、ヘルシンキのSamujiやLokalで取り扱っており、Michelin一つ星のRestaurantOraでも使用されている。

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